「6年連続の世界首位」になったトヨタ
熱狂が選別へ変わる局面で、強さを見せたのがトヨタだった。トヨタ自動車が2026年1月29日に公表した生産・販売・輸出実績は、集計にダイハツ工業と日野自動車を含むと明記している。
1月29日に配信されたロイターの記事によれば、同グループの2025年世界販売は1130万台規模で、6年連続の世界首位だった。同日に配信されたブルームバーグの記事も、グループ販売がフォルクスワーゲン(VW)を上回ったと報じた。なお、この数字(正確には1132万2575台)はグループ販売であり、トヨタ単体の1053万6807台とは分けて読む必要がある。
数字の意味は規模の大きさにとどまらない。前出のロイター記事によれば、2025年のトヨタ・レクサス販売に占めるガソリンハイブリッド車は42%、BEVは1.9%だった。BEV比率が小さいまま販売を伸ばしたのは、地域ごとの需要に合わせてHEV、PHEV、BEVを配分する余地を残したためだ。市場が一枚岩でないほど、技術の品ぞろえは守りの保険から、攻めの武器へ変わる。
EVは“唯一の正解”ではない
この流れを読み解く鍵が、豊田章男氏の発言である。
2021年9月9日に公表された日本自動車工業会(JAMA)の会見資料で、当時会長だった豊田氏は「敵は炭素であり、内燃機関ではありません」と述べた。脱炭素という目的と、動力源という手段を取り違えるな――その警告だった。
当時は、ガソリン車を早く禁止し、BEVへ一直線に移ることが先進的だとみなされた。トヨタは「EVに出遅れた」と批判された。だが、豊田氏が見ていたのは車両の後ろにある電力、雇用、部品産業、地域差だった。
石炭火力比率の高い国でBEVを走らせる場合と、再生可能エネルギー比率の高い国で走らせる場合では、削減できる二酸化炭素(CO2)の量が変わる。電池製造時の排出、発電時の排出、使われる地域のインフラまで見てこそ、脱炭素の効果を測れる。
これはEV終焉論ではない。豊田氏が問題にしたのはEVそのものより、EVだけを唯一の正解とする空気だった。守ろうとしたのはエンジンそのものではなく、脱炭素へ向かう「選択肢」である。問われるのは、炭素をどれだけ出すかだ。当時は異端に見えた言葉が、いまでは自動車産業の現実を説明している。

