首都と同時に被災する大阪にバックアップは務まらない
7月24日、特別国会で副首都法が成立した。今国会の会期は17日までだったが、副首都法案を通すために25日まで延長。課題が山積みのなか、慌てて成立させるほど緊急性の高いテーマではなく、見切り発車の感は否めない。
与党が駆け込むようにして成立させた背景には、自民党と日本維新の会の連立がある。昨年10月に公明党に三行半をつきつけられた自民党の高市新総裁は新たな連立パートナーを必要としていた。それに呼応したのが日本維新の会だ。維新は協力の条件をいくつか出した。その一つが副首都構想だ。自民党は副首都構想に興味がないはずだが、約束を反故にすれば政権運営に影響が出かねない。仕方なく会期内の成立に動いたのだ。
維新が副首都法にこだわるのは、大阪都構想を問う住民投票に弾みをつけたいからだろう。これまで大阪都構想は住民投票で2度否決されている。しかし維新は来年春に予定されている府知事選との同日で3度目の住民投票を目指す考えだ。
今回の副首都法では、副首都指定にあたり政令で定める地方行政体制の要件として、「特別区の設置」あるいは「道府県と政令市の連携協約」が想定されている。大阪府と大阪市で協約を結べば、わざわざ大阪都をつくって特別区を置かなくても副首都の資格を得られる。しかし、維新は「大阪都になれば副首都に指定されやすい」とキャンペーンを張るだろう。副首都を餌にして大阪都構想を実現させたいのだ。
維新の思惑が透けて見えるだけに、大規模災害発生時のバックアップという副首都法の目的も白々しく響く。
そもそもどのような大規模災害を想定しているのか曖昧だ。首都機能が大きなダメージを受ける災害として真っ先に思い浮かぶのは、首都直下地震と富士山の噴火で、発生したときには副首都・大阪が役に立つかもしれない。
しかし、想定される災害はほかにもある。南海トラフ地震が起きれば、首都圏から西の太平洋側が広範囲に被災する。内閣府によれば、被害想定は静岡以西のほうが大きく、都府県別の死者数は静岡県が最多の10万3000人に上る。東京の首都機能が麻痺しているのに、バックアップ役の大阪のほうが被害が大きいとなれば、副首都を整備する意味がない。
さらにいうと、2026年の今は物理的に副首都を置く発想自体が古い。1995年の阪神淡路大震災では役所が被災して戸籍が焼失した。被災者の中には、本人確認のために遠い故郷から親戚に来てもらった人もいたという。戸籍が紙という物理メディアで管理されていたからだ。さすがに今はデジタル化されており、正本は各自治体が管理する一方、副本は法務省のシステムで全国2カ所のセンターに集約・遠隔保管されている。しかし、日々の窓口業務を担う正本は依然として役所内で管理されており、被災すれば行政機能そのものが止まるリスクは残る。
バックアップが目的なら、本命はサイバー副首都だろう。戸籍などのデータをクラウドに移すだけではない。あらゆる行政手続きをスマホからできるようにして、どこが被災しても行政が止まらない仕組みを整えたほうがいい。
世界には地震のリスクが極めて少ない先カンブリア紀の地盤を持つ地域がいくつかある。グーグルやマイクロソフトがデータセンターを置くフィンランド、スウェーデンがそうだ。地政学的リスクを踏まえると、準同盟であるオーストラリアの内陸部もいいだろう。
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