なぜボンド大学は国際的な大学となったか

【大前】ボンド大学は「The world’sbest small universities 2023」で世界8位に選ばれました。私が学長を務めるBBT(ビジネス・ブレークスルー)大学は、ボンド大学と共同で「BOND-BBTグローバルリーダーシップMBAプログラム」を提供しています。BBTとボンド大学の両方のコンテンツを現地ツアー以外はサイバーで学びながらMBAが取得できることで人気です。キャンパスは日本人に人気のあるゴールドコースト。卒業までに現地での研修が2回ありますが、みな「また家族と戻ってきたい」と思うくらい美しい海岸と建物が魅力です。また我々の提供するMBAプログラムは世界的な2つの経営認証プログラム(AACSBとEQUIS)を取得しているので国際的な企業に勤めた場合には高い評価が得られます。

【ブレイルズフォード】ボンド大学はオーストラリア初の私立大学です。1987年の設立時は、あえて小規模ながら「質」に重点を置く戦略を取りました。質に焦点を当てるため、ターゲットを絞り、ニッチな分野に集中しました。40年近く質に焦点を当て続けた結果、国際的に評価が広がりました。

ボンド大学は、実際の仕事に沿った学びを提供する設備を持っています。たとえばキャンパスには実物の法廷があり、法律の学生は法廷で実習ができます。ビジネスの学生には起業家・インキュベーターのラボがありますし、医学の学生には模擬的な病院を設けています。ニッチの良い例はビジネススクールで、データ分析や現代のテクノロジー、ビッグデータにかなり強く焦点を当てています。また、私たちはオーストラリア・アクチュアリー・インスティチュートが認定する保険数理科学のプログラムを提供しています。

大前研一氏とティム・ブレイルズフォード氏(ボンド大学学長)。
大前研一氏とティム・ブレイルズフォード氏(ボンド大学学長)。

【大前】私が付け加えたいのは日本との関係です。まず、設立したのはオーストラリア人のアラン・ボンドと、日本の実業家、高橋治則の2人でした。建築を手がけたのは磯崎新で、創設時から日本との関係は深かったのです。また、彼らは日本長期信用銀行(現SBI新生銀行)からお金を借りていましたが、日本長期信用銀行は1998年に破綻。そのときボンド大学も財政的な問題を抱えました。窮地に陥ったボンド大学は、日本のビジネス界からの寄付の調整を私に頼んできました。私はボンドの評議会に対し、「日本企業に金銭を乞うより、学術コンテンツや実践的コンテンツの一部を日本人に提供し、寄付金の代わりに授業料を徴収したらどうか」と提案。それがBBTとボンド大学の合弁事業につながっています。

【ブレイルズフォード】現在、BBTとのパートナーシップに加えて、毎年50〜100人の日本人学生がボンド大学のキャンパスに学びに来ています。

【大前】オーストラリアは伝統的に「Dig and Deliver」、つまり鉱産物を掘って輸出する国です。しかしボンド大学は知識、知性、教育を提供し、お金を受け取っています。オーストラリア政府や大学があるクイーンズランド州は、それを貿易黒字への貢献と同じだと認識して何度か表彰しています。鉱物を輸出しないで海外から知的産物でお金を得るのは素晴らしいことだと。

【ブレイルズフォード】今では日本のほか、北米や南米、ヨーロッパなど、世界中の学生がボンド大学にやってきます。今回世界8位に選出されたことで、さらに国際的にリーチが広がることを期待しています。

学び直しに必要なのは柔軟性のある教育機会

【大前】日本ではテクノロジーに重点を置く「学び直し」が注目されています。

【ブレイルズフォード】この10年間でテクノロジーの進歩に影響を受けていない産業は一つも思い浮かびません。大切なのは、地平線をつねに見渡し、何がやってくるのかを意識すること。つまり適応性を高め、未来志向の柔軟な思考姿勢を装備する必要があります。

民間企業と起業家は自分たちのビジネスに没頭しすぎて、まわりで何が起きているかを見落とすことがあります。誰もが「コダック・モーメント(注:もともとシャッターチャンスという意味で使われていたが、コダック倒産以降、時代の変化に対応できず破綻することを指すようになった)」を避けたいものです。卒業生は、自分のビジネスの即時性を超えて考えるスキルを身につけることが重要です。

(構成=村上 敬 撮影=宇佐美雅浩)

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