中国のベンチャー企業に世界のAI開発者は驚愕

中国発の生成AI、DeepSeekの衝撃が凄まじい。米中のAI開発競争が激化することは必至で、日本はすっかり取り残されてしまった。

2025年1月20日、中国のAIベンチャーであるDeepSeekが「DeepSeek-R1」の正式版をリリースした。同社のルーツは、梁文鋒リャンウェンフン氏が立ち上げたヘッジファンド「ハイフライヤー」。ハイフライヤーはAIを活用して投資をするファンドであり、ファンド運用のためのAI技術開発部門が、のちにDeepSeekになった。

中国AIベンチャーDeepSeek創業者、梁文鋒氏。
中国AIベンチャーDeepSeek創業者、梁文鋒氏。

世界のAI開発者を驚かせたのは、「DeepSeek-R1」の開発コストだ。AIモデルの開発には、通常、最先端のCPU(中央演算処理装置)とGPU(画像処理装置)を大量に用意してAIのトレーニングを行う。実際、アメリカ企業はエヌビディアの高性能チップ「H100」を10万基単位で購入して開発環境を整えている。

それに対して、DeepSeekが使用していたのは、もっと安いチップだ。アメリカは安全保障上の理由から中国に対して輸出規制をしている。梁氏は規制前に、一世代前のモデルである「A100」を個人で1万基用意した。さらに輸出規制が強化される前に、DeepSeekは「H800」を2048基購入。「H800」はエヌビディアが対中輸出規制を受けて中国向けに開発したチップで、性能は「H100」に劣り、価格も安い。

これらを使って開発した「DeepSeek-R1」は、オープンAIが2024年9月にリリースしたAIモデル「OpenAI-o1」に匹敵する能力を示した。つまり低リソースで開発したモデルが、大量のコンピューティングパワーを使って開発された最先端モデルに、遅れることわずか数カ月で並んでしまったのだ。

低リソースで開発できたのは、「MoE」と呼ばれる低コスト化技術を活用したからだという。これはすべてのDB(データベース)を振り回して答えを追求するOpenAIのやり方に対して、当該部分と思われる部分だけに絞って答えを追求していくやり方(“昇華”)で、さすがに頭がいいな、と唸らせるものだ。

一方、「OpenAI-o1」の大規模な教師モデルを活用する「知識蒸留」という方法(“パクリ”)を使ったからだという指摘もある。ここで細かな技術的検証はしないが、いずれにしても高性能・高価なGPUを大量に用意しなくても最先端モデルに匹敵するものをつくれたことはたしかであり、1月27日にエヌビディアの株価は前週末比で17%も下落してしまった。

一連の展開を見て思い出したのは、ソ連崩壊後のアメリカ企業の動きだ。1980年代、アメリカでは半導体メーカーのインテルが開発に巨額の資金を投じて業界をリードしていた。それで勝ってきたのだから、普通なら物量作戦を続けるところである。

しかしインテルはソ連崩壊直後にモスクワに飛び、郊外に開発者を集めて研究所を設立。冷戦末期のソ連は物資に乏しく、研究環境も制約が多い。ただ、制約があるからこそ創意工夫が生まれる。インテルは小さい面積のところに回路を詰め込む創意工夫の知見を欲したのだ。実は同じことを航空機メーカーのボーイングもやり、スホーイやツポレフの技術者を囲い込んでいた。

DeepSeekも、リソースのハンデがある中で創意工夫を重ねてきたベンチャーだ。圧倒的リソースでAI開発をしてきたアメリカのビッグテックから見て、無視できない存在になったことは間違いない。

(構成=村上 敬 写真=AFLO)

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