大統領としての“役”を演じきれなかった
ウクライナとロシアの停戦交渉が難航している。ウクライナのゼレンスキー大統領は、トランプ米大統領との直接交渉で大失敗。トランプ大統領にも問題はあるが、停戦合意が進まない責任の一端はゼレンスキー大統領のトランプ対策不足にある。
3年間続いているロシアのウクライナ侵攻だが、停戦に向けた機運が高まったのはアメリカでトランプ大統領が誕生してからだ。
事態が動いたのは2月。トランプ大統領はロシアのプーチン大統領と1時間半にもわたる電話会談を行い、停戦合意に向けた手ごたえを得た。それを踏まえて、ゼレンスキー大統領をホワイトハウスに呼び、鉱物資源の権益をめぐる交渉を行った。要するに「レアアースをよこせば俺が話をつけてやる」と迫ったわけだ。
そのまま合意ができれば、ボールはトランプ大統領とプーチン大統領側に渡ることになり、ウクライナは待っているだけでよかった。ところがゼレンスキー大統領は、保守系メディアの記者や、J・D・バンス副大統領の挑発に乗ってしまった。
トランプ大統領もこれで火がついた。「君には手札がない」「君のしていることはこの国に対して失礼だ」と叱責し、交渉は決裂。公開の場で口論が始まる、極めて異例な外交ショーだった。
ショーと呼んだのは、保守系記者やバンス副大統領のTVカメラの前での挑発は、トランプ大統領の仕込みに違いないからだ。ゼレンスキー大統領が席を立てば、アメリカにもっと有利な条件をのませることができるし、逆に従順さを示したとしてもトランプ大統領の威厳が増す。
ゼレンスキー大統領は、そのシナリオを読んで、あの場でこのように言うべきだった。
「アメリカの支援にはいつも感謝しています。私たちは八方塞がりです。もし何か解決策をお持ちなら、すべてあなたにお任せしますから、ぜひ助けてください」
全権委任すれば、トランプ大統領は機嫌を良くしてプーチン大統領に電話を掛け直しただろう。それですぐ停戦合意に至るとは限らないが、うまくいかなければ、トランプ大統領に国際社会の批判は集まる。もちろん停戦合意に至るなら、それが一番いい。ゼレンスキー大統領はその機会を逃したのだ。
アメリカとウクライナの両大統領には共通点がある。2人とも、もともとテレビ出演が大きな転機となっている。トランプ大統領はリアリティ番組「アプレンティス」の司会で知名度を高めて、ゼレンスキー大統領は政治風刺コメディー「国民の僕」で大統領役を演じてお茶の間の人気者になった。
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