酒好きの私が注目するSAKEのポテンシャル

メイド・イン・ジャパンが世界で存在感を失って久しい。しかし、その中で輸出産業として急成長している産品がある。日本が誇る“SAKE”だ。

日本酒の棚
写真=iStock.com/gyro
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実は日本酒の国内市場は縮小し続けている。しかし、輸出は好調だ。2024年の日本酒輸出総額は434.7億円で、前年比105.8%となった。輸入国1位である中国の経済が冷え込んだ影響を受けて、ここ2年は踊り場だったが、14年の輸出総額は115.1億円で、この10年で4倍近い成長を示している。24年12月、日本酒を含めた「伝統的酒造り」がユネスコ無形文化遺産に登録され、世界のSAKEブームにさらに弾みがつきそうだ。

近年の日本酒の輸出増は、飲んべえの私も個人的にもうなずけるところが大きい。この10年でレベルが上がっていることを実感しているからだ。

私は趣味で全国津々浦々の蔵元を訪ね回っているが、最近の蔵元は非常に研究熱心である。たとえば貴醸酒きじょうしゅという種類の日本酒がある。仕込み水のかわりに今年つくったお酒を使う製法で、甘みが強くて濃いお酒ができる。

製法そのものは1970年代に開発されていたが、福島県・仁井田本家にいだほんけは「百年貴醸酒」と名づけて、100年間継続してつくることを宣言。現在14年目になった。個性的な味なので好みは分かれるが、最近の日本酒業界はこうした挑戦が珍しくない。フランス料理に合わせるマリアージュの中でも出てきたことがある。

酒米の研究も進んでいる。酒米といえば山田錦や五百万石が有名だが、各地で新しい品種が開発されている。たとえば石川県の百万石乃白でつくった酒はすっきりしておいしい。香川県・丸尾本店「悦凱陣よろこびがいじん」のように、酒米の産地や種類ごとに別々に仕込んでいる蔵元もある。高松の中川という寿司屋ではこれを55℃にして次々に出してくれる。ワインはブドウの品種で味が変わるが、日本酒も同じようにコメと水によって味の違いを楽しめる。

同じコメでも、精米歩合によって味が変わるのも日本酒のおもしろいところだ。玄米のままでは雑味が出るため精米して磨くのだが、一般的には精米歩合が低いほどすっきりと仕上がり、逆に高いほど米本来の香りがする。

磨けば磨くほどコメは小さくなるため、つくれるお酒も少なくなり、価格も上がる。私の好みは精米歩合35%のものだ。新潟県・北雪酒造「北雪 大吟醸YK35」は大好きな銘酒の一つで、他に福井県・黒龍酒造「黒龍 八十八号」、富山県・桝田酒造店「満寿泉ますいずみ 純米大吟醸 寿 プラチナ」もおいしい。

日本酒の特徴として、麹も忘れてはいけない。麹はコメの発酵に欠かせないものであり、独自の麹菌を代々受け継いでいる蔵元も多い。

ワインはテロワール(土地の自然環境)によって味がほぼ決まる。日本酒も水が大事なので土地の制約条件はあるが、酒米の品種、精米歩合、独自の麹と、蔵元のこだわりによって味は大きく変わる。別の言い方をすれば、日本酒は工夫の余地が大きいお酒だということである。その余地を使ってよりおいしいお酒をつくれないかと、研究熱心な蔵元が増えてきた。それが全体のレベルを引き上げているのだ。