全体のデザインがなく、目先の党利党略での変更

自由民主・公明与党と日本維新の会が高校無償化について合意した。しかし、拙速だったことは否めない。このままでは国を亡ぼす愚策になる。

高校無償化はもともと民主党政権が2010年に実現させた政策だった。ただ、国公立高校に支給される就学支援金年額11万8800円、そして私立高校に支給される就学支援金上限額にも所得制限があった。

ここにきて急に事態が動いたのは、24年10月の衆議院選挙で石破自民党が大きく議席を失ったからだ。予算を通すには野党の協力を取り付ける必要があり、維新の会がゴリ押しする高校無償化を呑まざるをえなかった。

(左から)日本維新の会の吉村洋文代表、自民党総裁の石破茂首相、公明党の斉藤鉄夫代表
高校無償化などで正式に合意し、写真撮影に応じる(左から)日本維新の会の吉村洋文代表、自民党総裁の石破茂首相、公明党の斉藤鉄夫代表

実は東京都や大阪府はすでに独自の行政判断で高校無償化を実現している。このことも今回の議論に拍車をかけた。地方からすると、地方創生を掲げているのに東京と大阪だけ無償化されている現状は不公平に見える。また、大阪府は財政に余裕があるわけではない。

今回の高校無償化は、国会運営や選挙対策といった国政政党の党利党略、そして財源が乏しい東京都以外の地方公共団体の思惑が重なって成立。これにより25年度予算案が可決され、4月から公立私立とも所得制限が撤廃されたというわけだ。

3党合意を見て思い出すのは、07年の国民投票法成立だ。当時の第1次安倍内閣は憲法改正に向けて国民投票法の成立を目指していた。与党は20歳以上に投票権を与えるつもりだったが、与野党協議の結果、法施行後に18歳以上への引き下げを検討することで合意。

本来は、このときに「成人は何歳からか」についてきちんと議論をしなければならなかった。「我が国は何をもって成人とするのか」という本質的な議論がないまま投票年齢だけを引き下げた。あまりにも拙速に決めたため、選挙権は18歳だが、飲酒やたばこは20歳から、少年法の保護対象から完全に外れるのも20歳からというチグハグな状態になってしまった。

全国の地方公共団体も対応に苦慮した。これまでは20歳になった人を「成人の日」の式典に招いていた。しかし、18歳が成人となったため、多くは式典の対象を20歳のまま継続させたものの、一部の地域では対象を18歳として対応したところもあった。

今回の高校無償化も党利党略で決まっており、本質的な議論は手つかずのままだ。無償化と義務教育は何が違うのか。私立も無償化されるとしたら、公立・私立それぞれの存在意義は何なのか。税金を注ぎこむのだから、高校卒業までにどのような人材を育てるべきかといったことも考える必要がある。

成人年齢の話と合わせると、高校まで義務教育化して、最後の1年は社会人教育を行い、卒業すればすべての面において成人として扱えば矛盾なくすっきりする。このように全体のデザインについて議論することなく、目先の党利党略で教育政策を進めていけば必ず歪ひずみが出る。これでは高校義務教育化を提唱する私も批判せざるをえない。