米の価格高騰で大騒ぎだ。6月第1週から備蓄米が店頭に並び始め、ようやく落ち着く気配を見せ始めている。備蓄米放出の指揮を執った小泉進次郎農水大臣にとっては、政治家になって初めてのお手柄であり、どこか得意げに見える。
振り返ると、2024年5月には米の店頭価格は5kg2100円前後だった。しかし徐々に品薄になり高騰。生産量や消費量に大きな変化はないため、いずれ落ち着くと思われたが、25年3月には4000円台に。約1年でほぼ倍の価格になった。
そこで政府は3月、不作に備えて保管している備蓄米の放出を決定した。ただ、そのやり方が悪かった。政府は放出米に1年(のちに5年に変更)を期限とする買い戻し条件をつけたのだ。買い戻し条件をつけたのは、備蓄米放出でむしろ米余りになり、想定以上に価格が下がることを避けるため。ただ、いったん買ったものをあとで返せと言われると、普通の集荷業者は入札に参加しにくい。実際、入札に参加できる業者は限られ、初回入札では全国農業協同組合連合会(JA全農)が9割以上を落札した。従来と同じように農協が大部分を落札すれば、流通の流れは何も変わらない。やはり店頭価格は下がらなかった。
そうしたタイミングで、江藤拓農水大臣(当時)が「米は買ったことがない。支援者の方々がたくさん米をくださり、売るほどある」と失言して更迭。代わって登板したのが小泉大臣だった。
石破茂総理の指示で、政府は備蓄米を随ずい意い契約で小売業者に販売することを決定。実は小泉大臣は総理の指示に従っただけだが、総理でさえ「3000円台」と言っていたところを、小泉大臣は「2000円程度」と言い切った。いつも空回りして「ポエム大臣」などと揶揄されていたが、今回は歯切れよく、短い言葉で伝えているから不思議と冴えて見える。
とはいえ、最初から随意契約にしていれば、もっと早く価格は落ち着いたはずだ。その意味では政府は対応が不十分だったが、良かったことが一つだけある。それは農協の機能不全が露呈したことだ。農協中心の流通で米の価格は上がり続け、農協を外すと下がる。政府の対応の不十分さから、この事実を目の当たりにして、国民の多くは農協の存在意義に首を傾げるようになったのだ。
小泉大臣の農協外しを財務省が応援する裏事情
戦後、日本の就労人口の約半分は農家だった。当時なら農家の協同組合である農協にも意義があった。しかし、農業従事者数は今や全人口の約1%の116万人(2023年)に減った。それに合わせて縮小すればまだわかるが、農協は全国に500以上あり、職員数は約17万人。116万人の農家を支えるために、これだけ多くの職員がいるのはサイズオーバーだ。
農協は農家でなくても加入できる。非農家の准組合員を加えると、組合員数は1000万人以上。農業従事者の10倍近い組合員がいるのは、組合員になるとローンを有利に組めたり、ガソリンの価格が安くなるからだ。多くの人が農協という巨大組織に寄りかかっている。
実は農協に寄りかかっていた存在がもう一つある。自民党だ。かつての自民党は農協を集票組織として頼っており、見返りとして農家を保護する補助金制度を整えてきた。しかし、農業人口がここまで減ると集票力は衰える。組合員が多いといっても、准組合員は生産者より消費者の側面が強い。もはや自民党として農協を守るメリットは少ない。父親が郵政民営化を行ったDNAが受け継がれているのか、小泉農水大臣はそのことをわかっていて農協外しに踏み切ったのだ。「備蓄米を売り出したら、いざというときの備蓄がなくなる」と騒ぐ族議員や野党の攻撃に対して、小泉大臣は「海外からの(無関税の)ミニマムアクセス米の入札を早める」と脅している。
さらに財務省は、7月に予定されている参院選の選挙対策として消費税に手を付けようという与野党の“危険分子”を封じ込めるためにも、物価への影響が大きかった米価格を下落させるのに、小泉応援団を演じた。つまり、今回は一人でポエムを読むのではなく強力な応援団がいたのだ。
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