税金を溶かした12年クールジャパン機構の末路

官民ファンドのクールジャパン機構(海外需要開拓支援機構)が虫の息だ。出資金総額1513億円に対して2025年度決算では累積540億円の赤字を発表。それを受けて統廃合の検討が始まる予定だ。安倍晋三首相(当時)の肝いりでクールジャパン機構が設立されたのは13年11月。人口が減っていく日本は、海外需要を取り込まないと成長が難しい。そこで日本の生活文化の魅力――いわゆるクールジャパンを活かした事業にリスクマネーを供給して、日本のブランド化を進めることがこのファンドの目的だった。

成績は散々である。エグジット済み案件も投資中の案件も損失だらけで、24年度時点の累積赤字は383億円だった。そこからさらに1年で累積赤字が540億円まで膨らんだのは、クモの糸にヒントを得た新繊維を開発していたスパイバーが今年3月に私的整理に入ったからだろう。ほかにも、日本のコンテンツを現地語で発信するWAKUWAKU JAPAN(44億円出資)は22年に放送・配信が終了するなど死屍累々。目立つ成功例は、ラーメン店「一風堂」を展開する力の源ホールディングスがIPOしたくらいだ。

現在投資中の案件も気を抜けない。クールジャパン機構は森岡毅氏率いる刀に80億円出資しているが、鳴り物入りで昨年開業したテーマパーク「ジャングリア沖縄」は開業半年間の来場者数が65万人にととどまり、初年度の目標を大幅に下方修正せざるをえなくなった。刀はすでにお台場の「イマーシブ・フォート東京」の営業を終了しているが、その前の「ヴィーナス・フォート」はスクウェア(現スクウェア・エニックスHD)創業者の宮本雅史さんと私が構想し森ビルの森稔さんに提案して合弁で立ち上げた。あの辺へん鄙ぴな土地に人を呼ぶために、若い女性の好きな南ヨーロッパ風の街並みにするという発想が原点にあった。

いまでは一休のサイトで人気トップクラスの「ATAMIせかいえ」を構想し、建築した。これも、私の個人的な感性では、「やっちゃったー」。しかし私にはホテル運営の経験がなかったので、尊敬するカトープレジャーグループの加藤友康さんに依頼した。私がやっていたら間違いなく失敗していただろう。経営者によってはすべて自分でやろうとして失敗することも多いのだ。

問題は、出資する側の目利き力だ。投資も百発百中とはいかないものだが、それにしてもクールジャパン機構の累積赤字540億円はひどすぎる。出資の原資は税金であり、これでは税金をドブに捨てているようなものだ。

目利きが下手な理由は簡単だ。官民ファンドだからである。日本でもっともリスクを取らない職業の一つが役人だ。一度なってしまえば一生安泰。安定志向の人生設計をしている役人に、リスクがある事業の評価ができるわけがない。クールジャパン機構実働隊は民間出身者だが、背後に控えるのが役人ならば、投資判断はやはり甘くなる。

同じ問題は他の官民ファンドも抱えている。海外でインフラ事業を手がける企業を支援するJOIN(海外交通・都市開発事業支援機構)は23年度で累計赤字が955億円に。農業ベンチャーなどに投資してきたA-FIVE(農林漁業成長産業化支援機構)は23年度に累積赤字が162億円に達して、25年度末に解散した。いずれも安倍政権時代に発足した官民ファンドだが、役人が絡んでいる時点でこうなる未来は見えていた。

ジャングリア沖縄
クールジャパン機構が出資した森岡毅氏率いる「刀」が昨年オープンした「ジャングリア沖縄」も、目標を大幅に下方修正せざるをえなくなった。

ロジックより直感が勝つ 800社で学んだ投資術

私はこれまでアタッカーズ・ビジネススクールの卒業生を中心に約800社のスタートアップを支援してきた。卒業生はそのことを知っているから、私のもとに「起業するので500万円貸してください」とよく直談判に来る。

しかし私は貸さないことに決めている。支援するなら融資ではなく出資だ。しかも本人が51%、すなわち過半数の株を持ち、社長として会社を背負う気概があることが条件だ。「友達3人と共同で会社を立ち上げました」ではダメだし、「ベンチャーキャピタルが過半」も迷走する原因になる。それを了承したものだけ事業内容を精査し、おもしろいと思えば出資する。その判断は、ロジックというより勘や直感に近い。本人の能力や人柄、事業内容や市場環境などを総合的に見て、ピンと来たらお金を出すのだ。

DeNAを創業した南場智子社長を支援したのも勘だった。南場さんはマッキンゼー時代の部下で、1999年に退職してオークションサイト「ビッダーズ」で起業すると報告に来た。すでにオークションサイトは世にあった。

(構成=村上 敬 写真=時事通信フォト)

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