東京23区内に、ワイナリーがあることをご存じだろうか。2014年、練馬区に都内初の「東京ワイナリー」を開いたのは、当時38歳の越後屋美和さんだ。醸造のプロでもぶどう農家でもなかった彼女は、周囲に「絶対ムリ」と言われた事業を2年足らずで実現した。東京ワイナリーを率いる越後屋さんに取材した――。
駅から10分、住宅地にあるワイナリー
東京23区の北の端、練馬区。西武池袋線・大泉学園駅から10分ほど歩くと、その小さな建物は見えてくる。2014年に越後屋美和さんが38歳で立ち上げた、都内初の「東京ワイナリー」だ。
現在東京にあるワイン醸造所は7つほど。以前ほど珍しくはないが、12年以上前に越後屋さんが着想したときには、「絶対にムリ」と多くの人に一蹴された。
ワイナリーといえば、山梨や長野など広大なぶどう畑に隣接しているのが一般的だ。小さな農地しかない東京で開くなんて、「夢物語」だと思われたのだろう。
しかも、ワイン造りにはお金がかかる。1億円以上といわれた創業資金、ぶどうの調達、販路の確保など、難しい課題が山積していた。だが、越後屋さんはその一つひとつを猛烈な勢いでクリアし、2年足らずの準備期間で東京ワイナリーをオープンさせた。
黒字経営を続けられる理由は?
設立から10年以上、小規模ながらも黒字経営を続け、2019年からは自社農園でぶどうの栽培も開始した。練馬産ぶどう100%の「ねりまロゼ」は予約だけで完売。契約農家のぶどうで造る「練馬ヌーボー」、東京のぶどうをミックスした「東京スペシャル」なども発売数カ月で売り切れる。
国内ワイナリーの約5割が厳しい経営状況に置かれる中、醸造のプロでもぶどう農家でもなかった越後屋さんが多くの人に愛されるワインを生み出し、躍進を続けるのはなぜなのか。
ワイナリー開設までには、屈託のない笑顔からは想像もできない「苦難のオンパレード」があった。




