「自分が飲みたい金額で販売」がモットー
ぶどうの仕入れ価格は、産地や品種ごとに異なる。例えばシャルドネとデラウェアの場合、シャルドネのほうが高い。それでも越後屋さんは、仕入れ価格だけで前者のワインを高く販売することはしない。あくまでワインの完成度、味を確認し、「自分が飲みたい価格」で決める。「今のところ、それで税理士さんもOKだと言っているので大丈夫だと思います」とほがらかにつけ加えた。
こうした越後屋さんの一見「型破り」に見えるやり方が、多くの人にムリだと言われた「東京初のワイナリー」を可能にしたのだろう。
2014年の創業から12年、安定かつ持続的にワイン醸造と販売を続ける東京ワイナリー。店舗では、週末限定で旬の東京野菜を使ったおつまみとワインを提供する「昼呑み」メニューも展開中だ。かつて描いた「東京の農業を盛り上げ、地域の人と農地をワインでつなぐ」役割をしっかり果たしているように見える。
店舗込み70m2、「いいご縁」があれば移転も
しかし、越後屋さんはまだ満足していない。ねりまワインの生産量を増やし、自社畑も広げたい。これまでワインを飲んでこなかった人にも「東京のワイン」を知ってもらいたい。醸造面でも販売面でも、まだまだやりたいことはたくさんある。
とはいえ、今の規模では限界も見えている。ワイナリーは店舗も含めて70m2で、醸造場所はその半分の35m2。これ以上の増産は難しいのが現実だという。移転も視野に入れてはいるが、「いいご縁があるときに動く」ものなので、今すぐにとは考えていない。
思えば、越後屋さんの人生にはいつも、「人との縁」があった。就職や転職、ワイナリー、研究所での醸造研修。ピンチになるとその都度新しい方向を示してくれる人が登場し、猛スピードでその道を進んできた。
次々に「良縁」がもたらされるのは、越後屋さん自身が「人」を大切にしているからだろう。それは、ボランティアメンバーへのまなざしにもよく表れている。自分の利益や理想のために人を動かそうとはしない。「その人らしさ」が発揮できる環境を大切にする。それぞれの個性が混ざり合って生まれるものを、おもしろがる。
こうした越後屋さんの姿勢に吸い寄せられるように人が集まり、東京にしかないワインが造られる。たくさんの人に囲まれて、今日も越後屋さんは、畑にワイナリーにと走り回っている。
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