落とさないように、慎重にはさみを入れる
筆者撮影
落とさないように、慎重にはさみを入れる

年間1万本を醸造、創業時の借入金は完済

越後屋さんは、「よくそこまで(農作業を)ボランティアに任せられるね」と農家の人から驚かれるという。ぶどうの収穫量を左右する重要な作業も、教えはすれど判断はメンバーに委ねている。「自分で考えて手を動かすことが、ワイン造りのおもしろさにつながると思うんです」とニコニコしながら話す。こうした彼女のスタンスが、多くの人を惹きつけているのだろう。

東京ワイナリーでは、年間1万本、約8000リットルを醸造している。生産量は多いほうではないが、造ったワインを着実に販売し、黒字経営を続けている。創業時の借入金は数年前に完済。国税庁によると、国内ワイナリーの約半数が赤字に近い状況の中、安定して事業を継続している。

東京産のぶどうで造るワインは全体の約2割だが、人気が高くよく売れる。先述の「ねりまブラン/ルージュ/ロゼ」は750mlで3500円(税込)。一般的に出回る輸入ワインや東京ワイナリーの他のワインと比べても、決して安くはない。それでも地元では、自宅用のほか、贈り物やお土産として購入する人が多いという。

取材中にも数人がワインを買いに来た
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取材中にも数人がワインを買いに来た。常連の人もいれば、この日初めてだという人もいた

区外のレストランからも「東京産」の依頼

飲食店からも「東京産」のワインを扱いたいという要望があり、区外のレストランやビストロなどからも依頼を受ける。練馬区のお祭りやイベントにも積極的に参加し、そこでの売り上げもプラスになっている。

「特別な日だけでなく、デイリーに飲めるワインを造りたい」という越後屋さんの思いから、東京産以外のワインは750mlを2200円前後で販売する。当初は1000円台で販売してきた。しかし、昨今の資材の高騰や物価高もあり、値上げを余儀なくされた。

また、店舗限定で「量り売り」も行っている。空の容器を持参すると、赤・白ともに200円/100mlで希望の量を購入できる。

量り売りのワインを注ぐ
筆者撮影
量り売りのワインを注ぐ

取材でワインの価格に話題が及んだとき、耳を疑ったのがその「値づけ」の方法だ。「何の計算もせずに、ざっくり決めている」という。一体どういうことなのか。

「自分が飲みたい金額で販売するのが私のモットーなんです。『このワインをいくらで飲みたいか』と考えて値段をつけています。仕入れ額が○○円で……という計算はしたことがありません」