皇位継承権を棚上げにして何のための典範改正なのか
皇室典範改正の議論が進んでいる。しかし、今慌てて改正する必要はない。このタイミングでの改正は高市早苗首相の得点稼ぎにすぎない。それに振り回される国民、そして当事者の皇室はいい迷惑である。
高市首相は就任当初から皇室典範の改正に前のめりだった。自民と維新の連立で誕生した政権は、連立合意に皇室典範改正を明記。今年2月の衆院選圧勝後の衆院代表質問では「皇族数が減少している現下の状況において、皇室典範の改正は先送りすることのできない喫緊の課題」と意欲を見せた。
この動きを受けて衆参両院正副議長と各党・各会派の代表者が議論する全体会議が開催された。6月10日には「立法府の総意」として以下の2つを決定し、政府に法制化を促している。「女性皇族が結婚後も皇族の身分を保持する」「旧宮家の男系男子を養子として皇族に復帰させる」
実はここに着地するまでに一波乱あった。8日の全体会議後の記者会見で森英介衆議院議長が、旧宮家の男系男子を養子に迎えた場合、その後に生まれた男子は「皇位継承権を持つ」という見解を示した。この見解に野党が反発。森衆議院議長は謝罪して事態を収拾するに至った。なぜ野党は議長発言に異を唱えたのか。それは皇位継承権に踏み込んだからだ。
全体会議の取りまとめでは、旧宮家の男系男子を皇室(天皇家、上皇家、皇嗣家を除く宮家)が養子に迎え入れると皇族になるが、養子として入った本人には皇位継承権がないというところまで合意ができた。たとえば旧11宮家の一つである竹田宮家の某タレントが、常陸宮家、三笠宮家、高円宮家の養子になっても、本人が天皇になることはありえない。ここまでは野党も文句はなかったわけだ。
問題は、養子が結婚して男子が生まれた場合である。子は男系男子の皇族で、皇室典範の他の条文がそのままならば皇位継承権を持つことになる。森衆議院議長の見解がまさにそれだった。
ただ、養子本人に皇位継承権は与えないと決めたように、その子に皇位継承権を与えるかどうかも皇室典範で決めることはできる。野党は養子の子に皇位継承権を与えたくない。そこで全体会議は養子の子の皇位継承権問題についてはあいまいなままにして「立法府の総意」とした。与野党で知恵を出してそのような落としどころにしたのに、森衆議院議長が踏み込んだ発言をしたから反発が起きたのだ。
そもそも皇室典範改正の背景には、皇位継承権を持つ男系男子は現在、秋篠宮皇嗣殿下と悠仁親王殿下、常陸宮正仁親王殿下のわずか3人だけであり、ほかにも皇位を継承できる皇族を確保したいという事情があった。ならば改正議論でも皇位継承権について触れることが筋である。ど真ん中の課題を棚上げするのであれば、何のために改正するのかよくわからない。
一方、今回封印されたテーマもある。女性・女系天皇の問題だ。愛子内親王殿下は国民的な人気が高い。共同通信が2024年4月に実施した世論調査によると、女性天皇を認めることに対して、「賛成」は52%、「どちらかといえば賛成」は38%で、両者合わせて90%。反対はわずか9%だった。男女平等の意識が社会に定着してきたこと、『週刊新潮』のアンチ秋篠宮家キャンペーンが影響していると思われるが、いずれにしても国民の多くは愛子天皇の誕生を望んでいる。
なぜ愛子内親王殿下は天皇になれないのか。その質問を孫にされて答えに窮したことがある。孫世代はAIネイティブ。おじいちゃんより生成AIが頼りになるらしく、さっと調べて「過去には推古天皇がいたじゃん」と指摘されてしまった。
ここから先は有料会員限定です。
登録すると今すぐ全文と関連記事が読めます。
- 広告最小化で快適な閲覧
- 雑誌『プレジデント』が最新号から読み放題
- ビジネスに役立つ学びの動画が見放題
- 会員限定オンラインイベント
検索時にプレジデントオンラインに関連する記事が表示されます



