最新研究が明らかにした難聴と認知症の関係
高血圧や糖尿病が認知症のリスクになると聞いて驚く方は少ないでしょう。しかし、「聞こえづらさ」も同じか、それ以上に認知症と関係があることは、まだあまり知られていません。
英国のランセット委員会は2024年、認知症に関わる「修正可能な14のリスク因子」を更新しました。注目していただきたいのは、14の因子のうち「難聴」の影響が大きな部分を占めていることです。同委員会は、難聴への対処が認知症のリスクを下げるという根拠が2020年の報告時より強まった、とも述べています。
難聴と認知症はどのように関係しているのでしょうか。現在、有力視されている説明のうち代表的な3つを紹介します。
1つ目は共通原因仮説と呼ばれる仮説です。聞こえと脳の衰えがしばしば並行して進むのは、背景に共通の因子があるからではないかという考えです。
高齢になって生じる難聴の大半は「感音難聴」です。音を感じ取る神経の細胞が減ったり障害されたりして、音を感じる力が下がっていきます。一方、認知症のうち6〜7割を占めるとされるアルツハイマー病も神経変性疾患です。加齢に伴う難聴と認知症の代表的な病態は、どちらも神経細胞の変性が影響しています。
喫煙や動脈硬化のように、耳と脳の神経を同時並行で傷める素因を持っていれば、両方が悪くなります。高血圧や糖尿病によって酸化ストレスが高まり血流が悪くなっても、神経細胞は損傷を受けます。このとき、損傷は脳だけでなく、耳の神経にも同じように起こる。高血圧や糖尿病、動脈硬化など、耳と脳の双方に影響する要因が、難聴と認知機能低下を並行して起こしているのではないかというわけです。
2つ目は、聞こえづらさが行動の変化を連鎖的に引き起こすという考え方です。行動変化が階段状になるため、「カスケード仮説」とも呼ばれます。
私たち人間は、人との交流の中で知的な機能を使っています。他愛のない世間話をしているときにも、脳の高次の機能は活発に働いています。人間は社会的な動物ですから、社会性を失うことは認知機能にとって大きな損失になる。そしてカスケード仮説では、人との交流を失い、認知機能を低下させる最初の引き金に難聴があるのではないかと考えるわけです。
聞こえづらさを抱えていると、人と交流したりやり取りしたりすることが億劫になります。家庭の中で言えば、家族がいろいろ喋っていても、耳が悪いために会話に参加できない。あるいは同じ家に住みながら、テレビの音量が家族と合わないので一人だけ別の部屋にいる。こうした過ごし方をしてしまう人は、決して珍しくありません。
家庭の外でも人間関係の縮小が起きます。町内会の催し物に出かけても段取りの説明が聞き取れない。何度も聞き返してしまう。やがて「もう参加しなくていいかな」となり、行動の範囲が狭まってしまう。
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