美ら海水族館の3分の1しかお客がこない
2025年7月25日に開業した「ジャングリア」は約40年前の東京ディズニーランドや約20年前のユニバーサルスタジオジャパンを彷彿とさせるような、「華々しいばかりのテーマパーク新設」で世間を賑わした。
沖縄から遠く離れた首都圏ですら「認知度7割」という数字は、事前のプロモーションとしては大成功である。企業で言えばパナソニック、ヒット作品でいえば「イカゲーム」と同じ認知度で、名前としては顧客層に十分すぎるほどに伝わり切っているとみてよい。
だが問題はその中身だろう。1年経過した2026年7月末時点で結果をみると延べ来場100万人(※1)は、当初の150万人という計画値、損益分岐の目安90万~100万人(1日2400~2700人)も大きく割り込んでおり、運営会社の親会社のジャパンエンターテイメント社の2026年6月期が173億円最終赤字であることが明らかになった。
沖縄北部にある不便な国頭郡エリアで300万人を寄せる沖縄美ら海水族館と比べると、その3分の1にも達しなかった結果である。こうした結果をみて、いま逆風が吹いている。
※1「スパ ジャングリア」とのダブルカウントであるため実数60万~80万人とみられる。
開業までは完璧だったが…
正直言って開業までのストーリーは「完璧」に近い。ジャングリアを手掛けた株式会社刀代表取締役兼CEOの森岡毅氏の「ここまで完璧に盤面を動かしてきた」(※2)という発言は、決して誇張ではない。
森岡氏は2010年にP&Gからの鳴り物入りでUSJのマーケティング部長として入社。当時(2010年度)750万人だったUSJ来場者数が、さまざまな施策の成果で2014年度には1270万に。
さらに、米国本社から「お前は正気で言っているのか」とすら反対されたハリーポッターの新アミューズメント施設への450億円もの巨額投資案件を実施。これが大成功し、USJ来場者は2015年に1390万人へと跳ね上がる。
この時に判断の基軸となったのが「数学マーケティング」だ。森岡氏と右腕の今西聖貴氏(1983年P&G入社の森岡氏の先輩にあたり、2012年USJ、2017年刀参画)で一斉に見せ合った結果、14年→15年の1年での増員数はほぼ予測通りだったという。
これにより森岡氏は、テーマパークを数学的ロジックでV字回復させたスターマーケターとなった。USJはIPOへの体制を整え、彼もサラリーマン人生を賭けた沖縄第二パーク構想を推進することに。2015年ごろには菅官房長官との会見で「政府として応援する」と翁長沖縄知事も含めた同意まで取り付け、実現に向けてスタートダッシュを切っていた……。
※2 森岡毅『心に折れない刀を持て』ダイヤモンド社


