まさかの逆転劇
その矢先にUSJがコムキャストに買収されたことで、米国本国から突然の撤回を言い渡される。
この決定を聞いた心境を森岡氏はこう表現している。
「奥歯がガチガチ鳴って止められない。そしてこのとき、忘れることができない奇妙な“音?”のようなものを私は確かに聴いた」「沖縄プロジェクトチームは、2階に上げられて梯子を外されるどころか、下から猛火で火あぶりだ!」
2011年から動いていたという沖縄案件を、2016年3月の決定後に失意の中で謝罪回りをした上で、「2016年12月、ついに私は万感の思いでUSJでの使命を終了した 」(※3)と退社している。
森岡氏はここから想像を超える逆転劇を見せる。自身がUSJをやめるきっかけにもなった沖縄のパーク開発を、自分の立ち上げたベンチャー企業で推進するというものだった。
※3 森岡毅『心に折れない刀を持て』ダイヤモンド社
いつしか「マーケティングの神様」に
「全ての事業は、需要よりもお金を使うから失敗する。需要を最初に知っておけば、いくらお金を使えばいいかわかる。戦い始める前に、もう“勝つか負けるか”を見ている。勝つ戦いしかやらない」
こうした確信めいた森岡メソッドは、USJ時代の3冊のベストセラーや、刀の評判もあいまって、多くのメディアで取りざたされる。
いつしか森岡氏は「マーケティングの神様」の称号を得るようになる。ジャングリアの施工が開始され多忙になる前の2018~2022年は、多くのメディアで森岡氏は数字をとれる経営者、マーケターとしてとにかく持ち上げられていた。
確かに著書を読むと彼の自己確信に満ちた筆致は魅力的で、まるで過酷な逆風のなかで経営の意思決定を行う焦燥感や使命感に自分も入り込んでいるかのような気持ちになる。
「我々はリスクが高いはずの新規イベントや新アトラクションを、5年間で60発以上も撃って、ほぼ全弾命中させた。私が数学マーケティングを駆使して、ひたすら確実性の高い弾だけを厳選して弾倉に詰めていたからだ」
「(ジャングリアの巨額資金を集めるのは)6発中6発とも実弾が装填されているロシアン・ルーレットで、奇跡の“不発”を狙って引き金を引くようなものじゃないか⁉」
刀には古巣のP&G、USJから多くの人材が集結している。“12ふりの刀”とも呼称された刀の幹部人材は、そのままUSJの成功の立役者たちだった。
「この12名が一気にいなくなると我々の作品であるUSJは機能停止してしまうだろう…したがって、我々は拘束のない“盟約”だけを結んで」順々に後継や引継ぎの準備ができた幹部が抜けていくことにした、という。

