企業の「値上げ発信」はどうあるべきなのか。桜美林大学准教授の西山守さんは「値上げ発信をする際には、企業はいま社会にどんな空気が流れているかを読む力が必要だ」という――。

値上げを「称賛」に変えたサイゼリヤ

ファミレス大手の「サイゼリヤ」が値上げを発表したところ、SNSでは批判どころか称賛の声が広がり、株価も大きく上昇した。原材料費や人件費、物流費の高騰で外食産業の値上げが相次ぐなか、消費者に負担を求めるニュースが好意的に受け止められたのは興味深い。日頃から手頃な価格を維持してきた企業への信頼が、値上げの受け止め方を変えたのだろう。

サイゼリヤの7月1日からのメニュー表。ミラノ風ドリアは税込み300円に=2020年6月23日、東京都中央区
写真=朝日新聞社/時事通信フォト
サイゼリヤのメニュー表(写真は2026年の価格改定前のもの)。=2020年6月23日、東京都中央区

一般に値上げは反発を招くか、「このご時世だから仕方がない」と容認されるかのどちらかだ。最近では、日本ハムのシャウエッセンが、値上げをめぐるSNSでの発信で批判を集めた。

そうした中、まれにではあるが、値上げの発表が賞賛されることがある。今回のサイゼリヤ以外に、過去には「ガリガリ君」「うまい棒」の値上げの際も消費者から賞賛を浴びている。

同じ値上げでも、なぜこれほど反応が違うのだろうか。

重要なのは、値上げの理由が正しいかどうかだけではない。消費者が企業の姿勢をどう受け止めるか、そして、その言葉が発せられた時点で、社会にどのような空気が流れているか――である。

値上げをめぐる成功と失敗の事例は、企業コミュニケーションの本質を浮かび上がらせている。

サイゼリヤ、ガリガリ君、うまい棒に共通する4つの条件

値上げが好意的に受け止められた企業には、次の4つの共通点がある。

1.顧客に良い商品を安価で届ける企業努力をしている
2.ぎりぎりまで価格維持に努め、やむを得ず値上げする
3.「ステルス値上げ」に頼らず、正直に価格改定を表明する
4.外部環境だけに責任を押し付けず、自社の問題として説明する

最初の二つは一朝一夕には実現できない。日頃の価格設定や商品開発、企業努力の積み重ねがあって初めて説得力を持つ。そもそも、すべてのブランドが低価格を競争力にしているわけでもない。高品質や独自性を重視する企業が、無理に「安さ」を強調する必要はないだろう。