身近な人と意見が食い違ったとき、どう話し合えばいいか。臨床心理士のジュリー・スミスさんは「決して論破してはいけない。一瞬の快楽のためだけに、2人の関係を焼け野原にしてはいけない」という――。(第3回)

※本稿は、ジュリー・スミス『読むだけで心身が整う メンタルメンテナンス大全』(訳:山藤奈穂子、河出書房新社)の一部を再編集したものです。

家事を手伝わない男性に欲求不満な女性
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大切な人を「論破」した先にあるもの

「あなたの行動の良し悪しは、他者への長期的な影響によって見極められる」――ロバート・グリーン(アメリカの著述家)

相手が何かミスをした。あるいはするべきことをしなかった。そのとき、私たちは無意識にこう感じる。私は尊重されていない。認められていない。無力だ。その損失を取り返そうとして、口論が起こる。相手をやり込めるお得意の論法を使って。

たいてい、その相手は世界で最も大切な人だ。あなたが自らの人生に迎え入れた人、これからもそばにいてほしいと願う人。同じチームの仲間。その大切なメンバーをこてんぱんにやっつける前に、どうか、1度立ちどまってよく考えてみてほしい。

愛する人と衝突したとき、勝って満足するのは自分だけだ。打ち負かされた相手は、「やっぱり君が正しかった」と納得するわけではない。愛されていない、理解されない、ひどいことを言われたという記憶だけが残る。あなたが議論に勝つために残酷な言葉を吐くのを見た。その記憶がこれまでの信頼関係を蝕む。

勝ちたい。大切な人との言い争いでそう感じるとき、立ちどまって考える。その人との未来はどうなるのか。あなたが勝ち、相手が負ける。その結果何が起こるのか。あなたがその相手との関係で本当に望んでいることは何なのか。

正しさを押し通して大切な人を失う

一切譲らず、容赦なく自分の言い分を通す姿を見せたいのか。大切な、大きな問いだ。

この議論に勝っても、きっとあなたは嬉しくない。満たされない。実際は大したことのないものについて、自分の正しさを相手に認めさせようとして、本当に大切にしたかったはずのものが壊れる。そして、1人になる。

2人の関係をより大きな視点で捉えよう。議論に勝つことにこだわらない。だがそれは、難しい会話を避けるわけではない。何でも相手に合わせるわけでもない。それも関係を壊す。意見の食い違いは、必ずある。それを乗り越える。口論に勝って認めさせるのではなく、力を合わせて解決する。1人がぼろぼろに打ち負かされる必要はない。もちろん、完璧な解決は難しい。

何度も話し合いを重ねることになる。ただ、その過程で忘れなければいい。この人にこれからも愛されたい。尊敬されたい。大切に思われたい。それが、あなたを止める。相手を思う存分こき下ろし、その心を完全に打ちのめす打撃を与えたいという衝動を止める。一瞬だけすっきりする代わりに、2人の関係を焼け野原にする言葉を防ぐ。