怒りを感じたときはどう対処すればいいか。臨床心理士のジュリー・スミスさんは「怒りは人間として当たり前の感情だ。ただし怒りに主導権を握らせてはならない。視野が狭まり相手の立場から物事を考えられなくなるからだ」という――。(第5回)

※本稿は、ジュリー・スミス『読むだけで心身が整う メンタルメンテナンス大全』(訳:山藤奈穂子、河出書房新社)の一部を再編集したものです。

拳を握るビジネスマン
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キレた後に自分を責めても怒りは収まらない

「怒りを抑えられないならば、それを引き起こした出来事よりも害をなす」――ルキウス・アンナエウス・セネカ(古代ローマの哲学者/出典不詳)

怒りを何度も爆発させる。そのあと自己嫌悪に陥り、情けなくなる。ますます、元の自分に戻れなくなる。自分はなんてひどい人間なんだ。ダメな人間なんだ。そう自己批判する。怒りのせいで、あなたはどんどん「なりたくない自分」になる。そして、苦しむ。

本当はそんなことをしたくないのに、怒りが優位性と権力をくれる気がして、やめられない。怒りで視野は狭まる。自分を守ることしか考えられない。どんな自分でありたいかは、どこかに吹き飛ぶ。相手を傷付けるとわかっていても、自分をとめられない。

怒りは、とめられる。腹が立った瞬間に、自分を立て直し、冷静になる方法を身に付けられる。大切な相手との関係を守れる。もし、以前よりも頻繁に怒りの爆発が起こる場合は、自分の状態や状況を注意深く見直す必要がある。

そのためには、まず責めずに、批判せずに、今の自分の状態を理解する。自分に怒りを向けても、解決しない。怒りを爆発させた自分を鞭打っても、心は穏やかにならない。いつもは落ち着いていられる状況で怒りが湧き上がってくるのなら、チャンスだ。最も難しい状況で最善の自分でいられる方法を学ぶ絶好の機会だ。

疲れ切ったときほど怒りに頼ってしまう

忘れないでほしい。怒りは、本来は悪いものではない。人間としての当たり前の感情の1つだ。エネルギーを蓄え、必要なら立ち上がって自分を守れるように準備するためのものだ。

怒りを表出するとさらに危険を加えられそうな状況では別だが、基本的に怒りを押し殺す必要はない。この感情があなたに何を伝えようとしているか、耳を傾ける。ただし、怒りに主導権を握らせてはならない。なぜなら、怒りは視野を狭めるからだ。相手の視点から物事が見られなくなる。相手の立場が想像できれば、状況が違って見える。別の行動を選べる。

怒りは最後の手段だ。もう他の手段ではどうにもできないと感じるときに、この感情が現れる。自分の思いを伝えるスキルが未熟なとき、ストレスが強すぎるとき、冷静に考えられず衝動的に反応する。疲れてへとへとなとき、怒りだけが使用可能なのだ。

なぜなら、怒りはストレス下における闘争逃走反応だからだ。調子がよくストレスのない日なら、もっと穏やかに対処できる。脳が、ストレス反応ではなく、最善の対処法にアクセスできる状態にあるからだ。