物に当たっても怒りは消えない

そのうえで、相手が間違っている、赦してはならないと思うかもしれない。ただ、後悔しかねないようなことをあなたにさせる強烈な怒りは和らいでいる。残ったエネルギーを活かし、考え抜いた行動が取れる。自分がこうありたいと願う自分でいられる。

怒りは発散すべきだ。そう長く信じられてきた。しかし、怒りを和らげたいなら、枕を殴ってもうまくいかない。「暴力的に体を使って怒りを外に発散すると、カタルシスが得られ、内にため込まれていたものが解消される」という仮説は誤りだ。多くの研究から、それが逆に有害であることが示されている。

パンチングバッグを殴りながら、腹が立つ相手のことを思い浮かべると、もっと腹が立つ。もっと殴りたくなる。

怒りを弱めたければ、怒りによって狭くなった視野を広げる必要がある。心と体を落ち着かせる。すると、状況を俯瞰して見渡せる。

普段なら怒らないようなことで、イライラし、怒りを爆発させてしまうなら、立ちどまり、自分に問いかけよう。いったい何が起こっているのだろうと。怒りのきっかけだけを見るのではない。人生全体を見直す。

キレたきっかけだけを見ていては変わらない

怒りを正当化する言い訳探しではない。状況をより理性的に、論理的に見直す。自分の行動の中にパターンを見つける。すると、次に同じパターンに陥るのを早い段階で防ぎ、違う選択ができる。

以下の質問の答えを書き出してみてほしい。怒りという最後の手段に頼らざるを得なかった理由が見えてくる。睡眠や食事、安心といった基本的ニーズをないがしろにし、ストレスに気付かないふりをしてきたなら、それは水の中に空気を閉じ込めようとする行為だ。予想もしないときに、空気は水面へと浮かび上がる。

無数の要素が、怒りにつながっていたことに気付けば、何を変えられるのか、何を変えると効果的なのかがわかる。人生を見直すことによって、怒りを防ぐために生活を変えられる。もちろんコントロールできないものもあるが、自分の手で変えられるものもある。自分の幸せや安心を優先するのは居心地悪く感じるかもしれない。だが、難しいものこそ、最も効果がある。