国内でヒグマによる被害が多発している。獣医師・ハンターの石名坂豪さんは「捕殺しても、人間側の不適切な行動が変わらなければ、また別のクマが人里に現れる。クマ問題の本当の原因は、人間側にもある」という――。(第3回)

※本稿は、石名坂豪『熊害(ゆうがい):獣医師ハンターが見たリアル(NHK出版新書)の一部を再編集したものです。

岩の上のヒグマ
写真=iStock.com/Thomas Faull
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クマ問題の本当の原因は人間にある


実際のヒグマ対応現場には、「対人間」の場面が頻繁に存在する。これが非常に厄介で、現場で対応・対策に取り組む人々に、多大なストレスがかかる大きな要因の一つである。しかし「対人」対応は、「対ヒグマ」よりむしろ重要かもしれない。

なぜならヒグマに対する対応は、問題の深刻化・長期化の原因となっていた特定の問題個体が捕殺されたり、当該地域の外へ移動したりすれば、いったんは収束するからである。

これに対し、ヒグマの問題個体が作り出される原因の多くを実は占めている、「人間側の不適切な行動・行為」への対応は、なかなか終わらない。そして、えてしてすぐに同じような行為が誰かによってくり返され、次の問題個体(ヒグマ)が新たに作り出されてしまうのである。なぜくり返されてしまうのか。

同じエリアの中で特定のヒグマに関わる人間が短期間で頻繁に入れ替わる結果、不適切な行動の内容が周知されないためであることもあれば(たとえば観光客の場合)、人の入れ替わりは少なくて、大多数の人々がすでに行動を改めてくれていても、ごく一部の不注意な人々が油断し、「やらかし」をくり返してしまうためである場合もある(地域住民や釣り人の場合)。

さらに、不適切な行動だと認識していても、目先の欲望に負けたり、もともと倫理観がやや欠落していたりで問題行動をとってしまう人々も一部いるようだ(ほぼすべての属性の人々)。

クマを引き寄せる生ゴミの放置

人々への普及啓発活動は重要だが、経験上、こちらがどれほど努力したつもりでも、「見ていなかった、読んでいなかった、知らなかった」と言う層が必ず一定の割合で存在する。そもそも、対象となるすべての人々に情報を届けることは不可能である。

そのため、人々への普及啓発や教育だけで問題を解決することは、残念ながら難しく、複数のアプローチと一種の割り切りが必要、というのが私の認識である。

さて、ヒグマ生息地における地域住民の不適切な行動とは、具体的にどのようなものだろうか。

私が羅臼町や斜里町などで何度も経験したのは、たとえば生ゴミや干し魚の管理不徹底である。ヒグマは彼らの胃腸で消化しやすく栄養価の高い肉や魚、あるいはそれらを含む生ゴミを一度口にしてしまうと、再びそれらを得ようと非常に執着することが多い。