反省を見せず「早く獲れ」と言う住民

それらの食物が人里の人為的環境の中で得られたものだった場合、執着心が警戒心を上回って行動がエスカレートし、建物内への侵入に発展することも多々ある。そのような個体を放置すると人身死傷事故が発生する可能性が通常より高くなるため、現場では緊急性の高い捕殺対応(箱わな・猟銃)が、「対ヒグマ」対応として実施される。

そのような流れの中で多くのヒグマの死に現場で関わるたびに、「どうにか事故なく獲とれた」と単純には喜べない、複雑な気持ちを私は抱えていた。

生ゴミや干し魚に餌付いたヒグマ(問題個体)を作り出した原因を作った人々が、あまり反省した素振りなく、「早く獲れ。昔はこんなことなかった。お前らが保護してクマを増やしたせいだ」などと、私たちに対して言ってくるような状況にたびたび直面したためである。

これらに対し、「時代や状況が変わって、ヒグマが多数いること自体はすぐに変えられないのだから、ヒグマ(泥棒)が居住地域にいること前提で、まずは自分たちでも(防犯)対策をしましょうよ」とか、「クマが餌付いた原因を作ったのはアンタでしょうよ」などと心の中では思っていたのだが、面と向かって口に出して言うことは、現場ではなかなかできなかった。

私のような地元生まれではない「ヨソ者」が、仮に正論であったとしても「偉そうな口」をきくと、地域の人々から返ってくるのは納得や理解よりも、反発であることが多いためである。

一人の不注意が真面目な人を巻き込む

では、大半が地元出身者である役場職員の優しい説得やお願いならば聞き入れてくれるのかと言えば、決してそういうわけでもなかった。

ただ一方で、比較的多数派の人々は、かなり以前からすでに行動を変えてくれていた。夜間は干し魚を家や倉庫の中にきちんとしまってくれたり、夜間も干す場合はなるべく高い所に干してくれたりしていた。

しかし、大多数の人々がそのように気を付けてくれていても、ひとたび一部の人が生ゴミや干し魚を屋外でヒグマに食べられてしまうと、執着心のスイッチが入って行動がエスカレートした個体は、それまでは警戒心が食欲を上回ってやらなかった、夜間に他の家の倉庫の扉を破って、建物内にしまってあった干し魚を食べるような行動をとってしまう。

そうなると、最初から気を付けてくれていた人々は、「役場の言うとおりに夜はちゃんと中にしまっていたのに、何でよ?」となるのである。また、ポイ捨てや不法投棄については、地域住民は外から来訪する観光客を悪者にしたがる傾向がある。

しかし現場でヒグマ対策の一環としてゴミの回収作業をしていると、規模の大きな不法投棄や常習的なポイ捨ての大半は、犯人が地域住民であることを強く疑わせるものであった。なぜそう考えたのか。

道路脇に捨てられたゴミ
写真=iStock.com/Songboon Ramsak
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