作物を守るには電気柵しかないが…
小麦やビートをヒグマによる食害から確実に守りたいのであれば、既存の技術では電気柵を正しい方法で張り、除草などのこまめなメンテナンスで高い電圧を維持する以外に、現実的な選択肢はない(音や光、ニオイだけを利用する装置で、鳥獣被害を長期間防ぎ続けることは不可能である。痛みや強烈な恐怖がなければ、必ず動物は慣れる)。
しかし周囲長が数百メートル以上の圃場を多数管理しているような各々<ルビ:おのおの>の農家に、長距離の電気柵の購入、設置、維持管理および積雪前の撤去作業を強いるのは酷であろう。
私は2013年に斜里町側へ異動した直後の時期に、ヒグマによる被害が頻繁に発生する畑を所有している男性から、「電気柵が有効なのは理解しているが、高いから導入できない」と現場で強く訴えられ、さらに「アンタたちが被害を補償してくれるのか」と詰め寄られたこともある。
斜里町ではその後、農水省系の交付金を活用して希望者には農協が電気柵を貸し出すようになり(実態としては支給に近い)、前出の圃場主男性もその制度を利用して電気柵を導入したようだが、それで農作物被害の問題が完全に解決するわけではないのが、難しいところである。
個人の農家を守るために税金を使うべきか
従来ヒグマによる被害が多発していた、河畔林や防風林に接する畑に電気柵を張ると、多くの場合、近くの別の畑に被害発生場所が移動する。いたちごっこになるのである。
そうかと言って、先読みして全ての畑に電気柵を張ると膨大な延長距離になるため、現実的には不可能である。また、電気柵の維持管理に要する手間の問題もある。
電気柵の張り方や維持管理には各農家の個性が出るもので、非常に丁寧に張って、こまめに草刈りを実施しているようなマメな農家もあれば、張った後は草が伸び放題のまま冬も撤去・回収せずに雪の下に放置し、翌年その畑にヒグマ被害が出ないジャガイモを作付けしても電気柵は前年のまま放置しているような農家も見受けられた。
最近は電気柵の維持管理作業を農家から請け負う事業者も誕生しているが、経費がかかるため農家が外注するのも限度がある。では、そこも交付金で面倒をみるのか。
一応は各農家が所有する「財産」であるはずの農作物を守るための行為に、どこまで税金を投入するべきか。人によって意見が分かれるところであろう。
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