人間とゴリラの遺伝子は98%以上一致している。だが、その恋愛と生殖の実態は想像以上に異なる。13年間密林で観察を続けてきた森啓子さんは、4時間で14回も交尾するオスや、子供を失っても強いオスを選ぶ母親の姿を目撃したという。そこには、アフリカに生息するゴリラたちの“性と生存”の現実があった――。(第3回/全3回、聞き手・構成=プレジデントオンライン編集部)

「発情期は月2日」と言われているが…

私は1998年から、アフリカのルワンダやコンゴ民主共和国の熱帯雨林に通い続け、野生のマウンテンゴリラを撮影しているドキュメンタリー作家です。

これまでに数え切れないほどの時間を彼らと共に過ごし、内戦の傷跡が残る森の奥深くまで分け入ってきました。国際的な科学ジャーナルである『Nature』によると、人間とゴリラはDNAの塩基配列が98%以上一致していると言われています。ゴリラという生き物に対して、皆さんはどのようなイメージをお持ちでしょうか。

「力が強い」「ドラミングで威嚇する」といった荒々しい姿を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、彼らの社会に深く入り込み、その営みを観察し続けてきた私が目撃したのは、教科書的な知識や一般的なイメージとは大きく異なる、驚くほど繊細で、かつ人間以上に複雑な「性」と「愛」の実態でした。

ゴリラの性について語る森啓子さん。プレジデント社にて
撮影=プレジデントオンライン編集部
ゴリラの性について語る森啓子さん。プレジデント社にて

特に、彼らの発情については生物学的な定説と現場の感覚に大きなズレがあります。一般的に、霊長類学の論文では、メスのゴリラの発情期は月に1回。2~3日と言われています。

また、妊娠中や授乳中のメスはホルモンの関係で発情せず、交尾を受け入れないというのが常識とされてきました。しかし、長年フィールドで彼らに密着していると、この説には違和感を覚えざるを得ません。