揺れ続けた高市首相の答弁

高市早苗首相は、いったい何を守ろうとしているのだろうか。

中傷動画を拡散させて他候補を貶めるような卑怯なことはしない政治家だという矜持だろうか。その政治家のために懸命に働く公設秘書もまた、主の名誉のために不正、不当なことはしないという誇りだろうか。

高市早苗首相と麻生太郎副総裁
写真=共同通信フォト
党首討論に臨む高市早苗首相(左下)と自民党の麻生太郎副総裁(右)=2026年5月20日、国会

去年の自民党総裁選を勝ち抜き、2月の衆院選でも歴史的な大勝を勝ち取った高市首相。史上初めての女性首相であり、大胆な行動で、新しい政治を切り拓いてくれるのではないかという期待の大きさが高い支持率を生んでいる。

その政治的な力を持ち続ければ、国論を二分するような大胆な政策も、憲法改正や皇室典範の改正さえも実現できるはずだった。そうした困難な課題を実現することこそ、政治家の名誉であり、誠実に取り組む姿勢を見せることが、政治家としての矜持であろう。

しかし、週刊文春が報じた高市首相陣営による自民党総裁選での中傷動画作成疑惑をめぐって、首相の国会答弁や記者との会見での発言は、揺れ続けている。

当初は、他候補の誹謗中傷をすることなど絶対にない、動画作成者との面識もないと、疑惑を全否定していた首相だが、週刊誌だけでなく共同通信までが、動画作成者にインタビューした記事を配信し、秘書と動画作成者の男性が打ち合わせをしているとされる音声も公開された。

「揺るがない」が「確信が持てない」まで1カ月以上

当初、秘書を信じると事実の確認さえ突っぱねていた高市首相も、ここに至って、秘書と問題の男性の間に接点があることは否定できない状況に追い込まれた。秘書がその音声が自分のものかどうか確信が持てないとしながらも、そうした会合に出ていたこと自体は認めたのである。

「一切面識がないという答弁は揺るがない」という発言が、「面識があるかどうか確信が持てない」まで変わるのに1カ月以上かかっている。しかも、ズルズルと後退して、ついに、事実関係を否定してきたのは、首相が信頼するその秘書の「勘違いだった」と言わざるを得なくなった。まさに「答弁崩壊」ともいうべき事態まで追い込まれたのである。