ハーレムを率いる屈強なオスが絶対的な権力を握る。そんなイメージとは裏腹に、ゴリラの世界では“あざとい熟女”が主導権を握ることも少なくない。13年間密林でゴリラを追い続けてきた森啓子さんが、若いメスより高齢メスが選ばれる意外な理由を明かす――。(第2回/全3回、聞き手・構成=プレジデントオンライン編集部)

ゴリラの婚活は「音」で決まる

アフリカでゴリラのドキュメンタリー作品を撮り続けて13年。ゴリラはオス一頭とメス複数頭からなる「ハーレム」を形成するのですが、彼らの恋愛におけるオスの役割は、意外なほどシンプルだと感じてます。

彼らの婚活は、まず「音」によって始まります。ジャングルの中で、オスは「ネイ・ボーカリゼーション」と呼ばれる独特の声を上げます。これは馬のいななきに似た「ヒヒーン」というような声で、周囲のメスたちに自分の存在と交尾への意欲をアピールするのです。

ゴリラの「恋愛事情」について語る森啓子さん。プレジデント社にて
撮影=プレジデントオンライン編集部
ゴリラの「恋愛事情」について語る森啓子さん。プレジデント社にて

また、よく知られている「ドラミング(胸を叩く行動)」も重要な求愛行動の一つです。この音は密林の中で2キロ先まで響き渡るといわれ、遠く離れたメスに自分の居場所と強さを知らせる役割を果たします。

ドラミングをするオスゴリラ
 © Keiko MORI & Rwanda Development Board
ドラミングをするオスゴリラ

音がメスを引き寄せた後は、視覚的なアピールに移ります。「ストラットスタンス」と呼ばれるポーズがその代表です。手足を突っ張り、背中を美しく反らせて、自分を大きく見せるのです。

ゴリラの世界では、腕が長く、足が短く、背中が引き締まっているオスが「イケメン」とされます。また、頭の大きさも重要なモテ要素です。頭頂部が尖って大きいオスほど、噛むための筋肉が発達しており、たくさん食べて健康であることの証明になるからです。

フムラと呼ばれているオスゴリラの頭部の発達を示す資料
 © Keiko MORI & Rwanda Development Board
フムラと呼ばれているオスゴリラの頭部の発達を示す資料。年齢を重ねるに従って、頭部が伸びているのがわかる

このように、オスは音で集客し、ビジュアルで性的魅力をプレゼンするという、非常に分かりやすい手順を踏んでパートナーを探します。