軍事・地政学リスクが業績を左右する時代へ
台湾海峡の緊張やホルムズ海峡をめぐる物流麻痺など、軍事・地政学リスクが直接的に企業の業績を左右する時代になった。ビジネスパーソンには日々の報道情報の真贋を見抜く目が問われている。
日本の外交・安全保障政策には、長年にわたり奇妙なねじれが存在してきた。国際社会では、軍事的専門知を持つ退役軍人や安全保障の実務家が政策形成に深く関与することは常識である。米国では国防総省や国家安全保障会議(NSC)に退役軍人が多数参加し、英国やフランスでも軍事経験者が政府の意思決定に助言する仕組みが整っている。
ところが日本では、文民統制の名の下に「軍事の専門家を政策から遠ざける」という独特の解釈が根付いてしまった。結果として、外交・安全保障の議論は観念的な抽象論に偏り、現実の国際環境との乖離が広がっている。
カギを握るのは「自衛隊OB」
この構造的問題を是正するために必要なのは、自衛隊OBの知見を政策形成に組み込む制度的ルートを整備すること、そしてその前提となるセキュリティクリアランス制度(※)を実践的に運用することである。これは単なる制度改革ではなく、日本の安全保障判断を「実戦的な知識に裏打ちされたもの」へと転換するための基盤である。
近年の国際情勢を見れば、この必要性は明らかだ。台湾海峡の緊張、南シナ海での力による現状変更、中東の不安定化、宇宙・サイバー領域の軍事化、これらはすべて軍事的リアリティを理解しなければ正確に評価できない問題である。金融市場においても地政学リスクは大きなテーマとなり、同分野の知見の有無が企業の業績に大きく関わることは自明だ。
しかし日本の政治家、官僚、学者の多くは、軍事・安全保障の専門的な教育を受けていない。メディアも軍事リテラシーが十分とは言えず、議論はしばしば情緒的な方向へ流れる。リベラル系の学者らによる的外れな国際法議論などは見るに堪えないレベルである。こうした環境では、国際社会の常識から外れた判断が生まれやすい。
※:国の重要な機密情報を取り扱うために、その人が信用できる人物かどうかを政府が事前に調査し、情報へのアクセス資格を与える制度。民間企業も対象となる「重要経済安保情報保護活用法」として、2025年5月に運用が始まった。

