美容のイメージではなく「機能」で売れた

お客様が実際に使ってみて「あ、これはいいな」と実感できる。ロート製薬の商品は、その「いいな」の感覚にずっとこだわってきました。

瀬木英俊
ロート製薬社長
瀬木 英俊(せぎ・ひでとし)

京都薬科大学卒業後、日本ヴイックス(現P&Gジャパン)を経て、1997年ロート製薬入社。2011年から14年間にわたり経営企画部部長を務める。CSO(最高戦略責任者)、常務取締役などを経て25年より現職。

ロート製薬といえば、胃腸薬の「パンシロン」や目薬の「Vロート」シリーズを思い浮かべる方も多いでしょう。明治時代の創業以来、おもに目薬と胃腸薬の会社だった当社の事業構成を大きく変えたのが、スキンケア事業です。「メンソレータム」をはじめ、近年は「肌ラボ」や「メラノCC」が国内外で支持されて、2026年3月期には同事業がグループ全体の売り上げの約6割を占めるまでになりました。

【図表】スキンケアの売上高はアイケアの4倍以上

今や当社を支える最大の柱となったスキンケア事業――その成長の原点となったのが、01年に発売した美容液「オバジC」です。

オバジCは、米国の皮膚科医ゼイン・オバジ氏の理論から生まれたドクターズコスメです。1990年代、胃腸薬や目薬に続く新しい商品を模索していた私たちは、肌が本来持つ力に着目するオバジ氏の考え方に出会い、強く惹かれました。肌そのものの健康に向き合う発想が、製薬会社として私たちが目指したいスキンケアの方向性と重なっていたのです。

当時、オバジ氏の製品は米国でクリニック向けに展開されており、日本ではまだ知られていませんでした。そもそも、ドクターズコスメが浸透しつつあった米国とは対照的に、当時の日本では、肌の悩みに対して「どの成分が、どのように働くのか」を正面から訴求する商品はまだ限られていました。以前は、ブランドの世界観やパッケージデザインに注目して化粧品を選ぶ方も多かったのではないでしょうか。

それでも私たちは、医師がつくった化粧品は日本でこそ受け入れられると感じていました。日本のお客様は、商品の働きを理解し、納得して選ぶことを大切にするからです。

たとえば靴の広告ひとつとっても、「通気性の高さ」や「足にかかる負担の違い」などを示す実験データが、日本では当たり前のように載っています。このような広告を海外の方に見せると、「ここまで詳しく説明するのか」と驚かれることも珍しくありません。私はここに日本のお客様の特徴が表れていると思います。つまり、素材やデザインだけでなく、それを使ったときにどんな効果があるのかを知ったうえで買いたい、という心理が反映されている。スキンケアでも、成分の働きをきちんと伝えられれば、必ず「機能」で売れると考えました。

そこで私たちは、まずオバジCの輸入から始め、まもなくして自社製造に切り替えることで、日本のお客様の肌質や使い方に合わせて処方や品質を磨いてきました。

化粧品らしくない茶色の小瓶を使った理由

機能を打ち出すからには、中身が伴っていなければなりません。当時の化粧品はさまざまな成分を配合するのが一般的でしたが、私たちは中心となる成分を決め、その力をどう引き出すかにこだわりました。医薬品づくりでは、有効成分をどのように安定させ、体に届け、働かせるかを考えます。その発想をスキンケアにも持ち込んだのです。オバジCの処方では、ピュアビタミンCを主役に据えました。

毛穴まわりの乾燥やキメの乱れが気になる方にピュアビタミンをお届けしたい。その一方で、ピュアビタミンCは扱いの難しい成分でもあります。光や空気、熱に弱いですし、水溶性であるため肌になじませるにも工夫が必要でした。そこで生きたのが、「メンソレータム」の軟膏やクリームの製造を通じて培った知見です。肌に塗布する製品を手がけてきた経験が、オバジCの開発を支える土台になりました。

(構成=水嶋洋大 撮影=門間新弥)

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