【藤代】金利のある世界が戻ってきました。金利が急上昇している現在の状況を「マーケットが財政への警鐘を鳴らしている」と評価する報道も見られます。ただ、この点については、報道と私の見方はかなり違います。
冷静に数字を並べてみましょう。日本銀行がマイナス金利を解除したのは2024年3月で、そのときの10年国債の金利は0.7〜0.8%でした。それから2年経って、最近では2.7〜2.8%の水準です。2年間で2%、金利が上昇したことになります。この上昇は、果たして本当に「急上昇」なのでしょうか。
国際比較をすると、日本の金利は突出して高いわけではありません。コロナ禍以降は世界的にインフレが進み、アメリカもヨーロッパも金利を上げてきました。特にアメリカは、一時ゼロ金利政策を行った後、22年3月から23年7月にかけて5・5%まで誘導金利を引き上げました。結果、10年国債の利回りは急騰し4%台後半に。その後、利下げ誘導を行いましたが、現在も4%台半ばを推移しています。
こうして見ると、日本の金利は2年余りで2%しか上がっていない、という言い方もできるわけです。もし本当に財政への懸念が高まっているのなら、金利はもっと速いペースで上がるはずです。日本銀行は長期金利をうまくコントロールできていると評価できるのではないでしょうか。
毎月勤労統計を見ていくと、賃金上昇率は前年同月比3%まで伸びています。今後も下がる雰囲気はなく、来年も再来年も賃金の上昇が続きそうだという見通しが支配的です。その中で金利が3%手前で落ち着いているのは、今のインフレ環境から考えると、むしろ低い水準だと私は思います。財政プレミアム、つまり「財政が危ないから」という理由で上乗せされる金利は、それほど乗っていないのではないかと考えています。
そもそも、賃金と物価がしっかり上がっている世界で金利が上がるのは、きわめて当たり前のことです。むしろゼロ金利をあれだけ長く続けてきたほうが異常だった。異常な状態に慣れたので、正常に戻る動きが異常に見えてしまうのだと思います。
もう一つ、根拠を挙げておきます。銀行株です。このところ、銀行の株価はかなり上がってきています。一般論として、金利上昇は銀行のビジネスにポジティブですから、金利が上がれば銀行株が買われるのは自然なことです。
もし今の金利上昇が悪い金利上昇、つまり財政プレミアムだけで金利が上がっているのなら、銀行株は上がらないはずです。経済が悪いまま金利だけが上がる世界では、銀行にとって貸し倒れリスクが高まるだけだからです。
財政破綻を心配する人が見落とす金利以外の指標
ところが投資家は、銀行がお金を貸せばちゃんと返ってきて、利ざやが稼げる正常な世界を前提にしている。もちろん、株価は金利以外の要因にも左右されますが、株式投資家が積極的に銀行株を買っているという事実から判断しても、私は今の長期金利の上昇を「悪い上昇」だとは思っていません。
「利上げをすると政府の利払い費が増えて、財政が破綻する」という意見もよく目にします。これは、議論の片方しか見ていません。物価が上がり、企業収益が向上し、賃金も増加している現在のような状況では、税収も増加しています。利払い費の増加は、税収の増加で吸収できるはずです。
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