「ゴリラは人間と一緒だよ」
著名な霊長類学者であるダイアン・フォッシーが設立したカリソケ研究所の現地研究員やトラッカー(案内人)たちと話をしていると、彼らは口を揃えてこう言います。
「ゴリラは人間と一緒だよ。いつでも交尾できるよ」と。生理的な排卵のサイクルは存在しますが、ゴリラのメスたちはそのサイクルとは無関係に見えるタイミングでもオスを求めます。
例えば、すでに妊娠しているメスや、生まれたばかりの子供におっぱいを含ませている授乳中のメスであっても、オスに対して交尾を誘いかける姿を私は何度も目撃してきました。論文に書かれた記述が、必ずしも野生の真実をすべて捉えているわけではないことを、森のゴリラたちはその身をもって教えてくれているのです。
ゴリラの交尾はどのように始まるのか
では、実際にゴリラの交尾はどのように始まるのでしょうか。
よくある動物番組では、屈強なシルバーバック(成熟したオス)が力づくでメスを従えているような印象を持つかもしれませんが、現実はもっと繊細で、高度な心理戦が繰り広げられています。
オスが主導権を握る場合、彼らは「ネイ・ボーカリゼーション」と呼ばれる、馬のいななきのような独特な声を発します。この声が「愛の誘い」の合図です。ハーレムのメスたちは一斉に「私かな?」「誰を呼んでいるの?」と色めき立ちますが、オスは特定のメスを見定めて声を上げています。
一方で、メスから積極的に誘うケースも頻繁に見られます。オス・メス問わず異性を誘うこうした行為を、専門用語で「ソリシット(誘惑)」と呼びます。メスのアプローチは非常に多彩で情熱的です。
オスの目をじっと見つめたり、寝ているオスの鼻先に小枝をちょこんと投げたり、あるいは大胆に背中を撫でたりして気を引きます。現地のトラッカーたちは、この愛の駆け引きを「ネゴシエーション(交渉)」と呼んでいます。まさに、お互いの合意形成のプロセスなのです。
面白いのは、メスが見せる「焦らし」のテクニックです。自分から誘っておきながら、いざオスがその気になって近づくと、プイと身を翻して少し離れた場所へ行ってしまうことがあります。そうすることで、オスの狩猟本能を刺激し、関心をより強く引きつけるのです。オスが追いかけてくると、また少し離れる。
まるで人間界の恋愛リアリティショーを見ているかのような、高度な駆け引きがジャングルの奥地で日々行われているのです。


