自衛隊機が中国軍機からレーダー照射を受けたことで、日中の緊張関係がさらに高まっている。統計データ分析家の本川裕さんは「政治的な主張の隔たり以前に、生き方や価値観というレベルで両国が正反対であることを証明するデータが発表された」という――。

政治的な主張の隔たり以前の日中の「断絶」

「台湾有事」を巡る高市早苗首相の発言に端を発し、日中間の緊張関係が続いている。もともと両国は、安全保障問題や外交問題ばかりでなく、生活習慣や観光地の行動など何かにつけて考え方に食い違いが目立つ。

隣国ゆえになるべくトラブルを避けて付き合っていかなければならない仲であるため、それだけ相互理解が双方にとって重要な課題となっている。

そこで今回は、政治的な主張の隔たりをいったん置いて、ブランド志向の大きな差を手掛かりに、日中差が目立つ調査データを見ることで、相互理解の助けとなることを目指してみよう。

パリに本社を構える世界的なマーケティング・リサーチ会社であるイプソス(Ipsos)社はグローバル・トレンド調査を10年以上、世界各国を対象に実施している。

まず、今年9月に公開された最新版の2025年報告書により、この調査の1項目であるブランド志向の世界動向や各国比較について見てみよう。

イプソス社は世界の新しい潮流(トレンド)をいくつかの項目に整理しているが、その一つとして「ヌーヴォー・ニヒリズム」を挙げている。

極端な「今を生きる」精神主義の中国

これは下記の2つのトレンドからなっているとされる。

①主要国の2024年選挙で、現在の政治家や政治体制への不満として示された露骨なニヒリズム

②そして経済的ストレスによって長期的な夢の実現が阻害された結果生じた従来より快楽主義的な「今を生きる」精神

さらにこれと関連して「個人主義への逃避」というトレンドも指摘している。これは、世界状況を変えられないという意識の下で、人々が自分の生き方を重視し、自分自身だけでコントロールできるものに注目しているという動きである。

そして、「個人主義への逃避」を示す指標として、図表1のブランド志向データを掲げている。