中国経済の実態はどうか。中国はバブルのリスクを避けるため、景気に応じて引き締めと緩和を繰り返す「ストップゴー政策」でかなり堅実な政策運営をしているという。河野龍太郎、唐鎌大輔が書いた『世界経済の死角』より紹介しよう――。
※本稿は、河野龍太郎、唐鎌大輔『世界経済の死角』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。
コロナ禍、先進国で中国だけが違った対応
【河野龍太郎(BNPパリバ証券経済調査本部長・チーフエコノミスト)】中国経済については、よく「すっかり衰退している」と言う人がいますが、私は少し違う見方をしています。
たしかに人口減少局面は続いていますし、不動産バブル崩壊の後遺症は今も残ったままです。おまけに、米中対立で、これまで国内の過剰生産能力を吸収していた輸出が停滞している点で、さらに厳しい状況にあるのは間違いないでしょう。
また、トランプ2.0による関税政策は、中国にとって非常に大きな影響を及ぼすリスクがあります。ただ、コロナ禍や不動産バブル崩壊時もそうでしたが、近年は、危機が訪れた場合でも、中国はマクロ経済政策において、無茶な政策や極端な手段には出ていません。
【唐鎌大輔(みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト)】日本に比べると、裁量的なマクロ政策を適宜、温存しているようにも見えますね。
【河野】はい。2021年以降、世界でインフレが進んだ原因を振り返ると、その点が明確になると思います。まず、コロナの影響などでサプライチェーン(供給網)が寸断され、モノの供給に制約が生じました。
その一方で、先進国は景気を支えるために大規模な財政支出を行いました。その結果、物価が上がり始めたにもかかわらず、多くの国が金融緩和(低金利や資金供給)を続けてしまい、金利を上げるなどの引き締め策を取るタイミングが大きく遅れてしまいました。
つまり、供給ショックだけが原因ではなく、先進国の総需要政策が行きすぎた結果として、世界的なインフレが引き起こされたということです。ところが、中国はコロナ危機の際に、主要国の中では唯一、こうした過剰な対応を取っていなかったのです。

