特に成長分野、新分野での産業の育成に注力

【唐鎌】たしかに中国の財政政策は、メリハリが利いている印象はありますよね。拡張財政から抜けられない日本、無理して緊縮財政にこだわるユーロ圏との違いを感じます。

【河野】ただ、中国は需要があまり強くない一方で、供給力を大幅に強化しています。「新質生産力」といって、特に成長分野、新分野での産業の育成に力を入れています。

たとえば先ほども出てきたEV産業がこれに該当しますが、EVは消費財の一つでもあり、自動車の値段が安くなれば、家計の実質購買力も増えます。同時に化石燃料からのエネルギー転換にもつながります。

彼らはグリーンエネルギーへの移行を進めながら、輸入エネルギーへの依存を減らそうとしています。中国は石油については中東やロシアからの輸入に大きく依存しているので、エネルギー安全保障の観点からも、国内でまかなえる再生可能エネルギーを前提としたエネルギーシステムや輸送システムにシフトしようとしているのです。

すでに無人タクシーが北京や武漢、上海、深圳などの主要都市で広がっているのは、よく知られていますよね。

Baiduの自動運転ロボタクシー
写真=iStock.com/hapabapa
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しかし、中国の需要が弱いままだから、こうした成長分野の強化は、必然的に輸出を増やす形になり、ドイツをはじめとする他国にとっては厳しい状況が続いています。

中国経済はバブルが発生しやすい

【唐鎌】そうですね。かつて中国で生産されたユニクロの商品などを、日本が輸入している状況を指して「デフレの輸入」という言葉がよく使われましたが、今後はそれがEVになるのかもしれません。

【河野】つまり、中国の需要は低迷しているけれど、輸出競争力は強い。その中でもEVやIT分野などのような新分野で新製品、新サービスがどんどん出てきているわけです。

さらに、現在の中国経済は潜在成長率が5%を下回り、4%台になっている可能性もあります。それでも過剰な資本蓄積が続いているので、先にも触れましたが、お金が余ってバブルが起こりやすい状況は今も変わっていません。

つまり、中国経済はバブルが発生しやすい環境だから、中国当局も金融緩和を慎重に進めている。

近年、話題になっていたのが、中国で国債バブルが起こり始めているという点です。これまでの不動産バブルや株式バブルを生んだマネーの次の行き先が、今度は国債市場になっている可能性があるというわけです。

経済学でいう「バブル代替」、つまり「バブルリレー」が始まっていると、私はにらんでいます。だから、国債バブルを煽らないよう、中国政府も極端な金融緩和をあえて避けているのではないかと思っていますが、唐鎌さんは中国経済をどう見ますか。