ユニクロに続きBYDがデフレを助長する可能性
【唐鎌】今おっしゃった「中国が供給力を強化している」という点が、非常に大きなポイントだと思います。先ほどお話しした通り、日本でデフレが問題視されていた時期、ユニクロのような中国製の低価格商品が日本市場に流れ込んできたことが注目されました。
今、そうした中国の供給力の象徴が、かつてのようなアパレルではなく、EVのような先進国としても看過できない財に振り替わっている。中国経済はアパレルを輸出していた頃に比べれば格段に成長しましたが、それでも中国製EVは極めて価格競争力があります。
EVを大量に生産・輸出することで、やはり世界にデフレを輸出しているような状況になっていくのだとすれば、インフレに思い悩んだ2022年以降の世界経済が、中国要因で曲がり角に差しかかるという展開も予見されます。
ご理解の通り、ドイツのフォルクスワーゲン問題、日本の日産問題は、中国が自動車市場で頭角を現してきたことと無関係には語れないはずです。
結論めいたことを言えば、世界的に見れば、中国がEV・AI・半導体の3分野で競争力を強め、輸出を拡大すればするほど、世界のインフレを抑える方向に作用するのではないでしょうか。
世界がインフレ退治に勤しんでいる今、やや突飛な発想になりますが、中国の輸出を通じてデフレが世界的に助長される未来もないわけではないと思います。かつてのユニクロ、今はBYD……といったところでしょうか。
モノの輸出が滞れば、成長の足を止めざるを得ない
【河野】中国によるダンピング(投げ売り)のリスクが出てきたというのは、悩ましいところですね。
その裏側にある資本の流れを見ると、新興国、とりわけ中国は経済規模が大きくなっているにもかかわらず、「安全資産」をこれまで供給できなかったために、アメリカやドイツ、日本などの先進国の国債を買ってきたわけです。
この点も改めて詳しくお話ししますが、短中期的には、中国の資本が海外に流れ出ることで、先進国は大規模な財政政策を実施しても、長期金利の急騰が避けられていた、という側面があります。
アメリカの公的債務残高が増え続けても大丈夫なのは、まさにこのグローバルな資金の流れが存在していたおかげですよね。アメリカ国債への中国からの資金流入が続いていたから、全体のバランスが取れていた。
しかし、もしトランプ関税をきっかけに世界経済の分断が進めば、これまで保たれていたバランスが崩れかねません。モノの輸出が滞れば、中国は成長の足を止めざるを得なくなります。
そして、新興国からの「資本輸出(米国債の購入)」が止まれば、先進国の長期金利が急騰し、アメリカ経済にも停滞の波が押し寄せる可能性があります。

