創業者の永守重信氏が「絶対君主」として君臨し続けたニデックはいかにして不正に手を染めていったのか。公認会計士の白井敬祐さんの著書『会計が面白いほどわかるミステリ 決算書に隠された7つの罪』(KADOKAWA)の一部とともに、第三者委員会調査報告書で明らかになった同社の実態を読み解く――。

組織を歪ませた創業者・永守氏の「言葉」

「黙って決算を整えろ」

役員たちを土下座させ、赤字の隠蔽を冷酷に命じるカリスマ社長。これは拙著『会計が面白いほどわかるミステリ』のプロローグで描かれる、架空の企業「帝国重工」のワンシーンです。会計をより楽しく学んでもらうために、少し(かなり?)大げさに表現したシーンでした。

田中社長(マンガ)「再確認? そんなものは不要だ。黙って決算を整えろ」

フィクションならではの極端な描写に見えるかもしれません。しかし今、現実でも、これと酷似した事態が起きていたことが明らかになりました。

2026年3月3日、ニデック(旧日本電産)の第三者委員会報告書が公表されました。そこで暴かれた、グループの多岐にわたる拠点で同時多発的に行われていた多数の会計不正。純資産への影響額は約1397億円、さらに約2500億円規模の減損損失の可能性も示唆されています。

2月16日配信の記事では、「不適切会計で揺れるニデック(Nidec)が2025年11月に発表した第2四半期決算で、合計約877億円の巨額損失を計上した」と書きましたが、その2、3倍の不正が隠されていたことになります。

この会計不正の背景にあったのは、創業者・永守重信名誉会長(2月26日付で辞任)の苛烈なプレッシャーと、それに耐えきれず「帳簿のトリック」に手を染めた現場の悲鳴でした。

マンガのセリフと、報告書に生々しく記録されたニデックの内部事情。この2つを対比させることで、トップの「言葉」がいかに組織を歪ませ、現場を不正へと追い込んでいくのか、その恐るべきメカニズムが浮き彫りになります。