企業が決算の数字を偽装する方法にはどのようなものがあるのか。公認会計士の白井敬祐さんは「複数の企業間で取引をぐるぐる回し、各社が売上を計上する『循環取引』は、個々の取引に契約書や入金の記録も残るため、外部から指摘するのはかなり難しい」という――。

※本稿は、白井敬祐・三ツ矢彰『会計が面白いほどわかるミステリ』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

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写真=iStock.com/Simon Carter Peter Crowther
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小さな嘘が取り返しのつかない罪になる「不正会計」

昨年(2025年)8月に上場廃止、10月に元経営陣が逮捕され、倒産することとなったオルツ。時代の寵児ともされた同社がどのように119億円もの架空売上を作り上げたのか、またなぜ誰もこの不正を見抜けなかったのかを解説していきます。

不正会計が発覚し、上場廃止になると、その会社の株の価値はなくなり、投資していた人たちに大損害を与えます。投資家は自衛のためにも危ない会社を見抜く目を養わなければなりません。

企業の不正会計は多くの場合、「今月だけ数字を良く見せよう」という軽い気持ちから始まります。その小さな嘘が、取り返しのつかない罪へエスカレートするメカニズムを見ていきましょう。

売上を前倒しする「期ズレ」から始まるのが一般的

【ステージ①】売上の先行計上(期ズレ)

まず基本の確認です。売上は、商品を納品したり、サービスを提供するなど「お客さんとの約束を果たした時」に計上します。

12月に受注しても、納品が1月なら売上は1月です。これを意図的に12月の売上にしてしまうことが、不正の第一歩です。

なぜなら、前倒しすれば翌月の売上に穴が開きます。その穴を埋めるために、また次の月の売上を前倒しする……という自転車操業に陥り、止められなくなります。

【ステージ②】架空売上

売上の先行計上による不正では業績達成が追いつかなくなると、次は「架空売上」という不正手口に手を出します。

これはペーパーカンパニーを使ったり、取引先と共謀したりして、実在しない取引をでっち上げる完全な嘘です。架空の相手との取引なので入金がなく売掛金が溜まる一方ですが、経営者の個人資金で入金を偽装するケースもあります。

【ステージ③】循環取引

架空売上の進化形で、複数の会社が結託し、商品をほとんど動かさずに書類上だけで取引を回し、売上を膨らませます。

オルツのケースでは、この循環取引を用いて、なんと8~9割もの売上を架空計上しており、オルツの成長にはほとんど実態がなかったことが明らかになっています。