体の疲れはどうしたら解消できるか。産業医の岩見謙太朗さんは「休んでいるのに疲れが取れないという人は、むしろ動かないことによって、筋肉がこわばり、倦怠感につながっていることが多い。筋肉のこわばりを取るには、筋膜リリースを行うのが有効だ」という――。

※本稿は、岩見 謙太朗『ハーバード、ペンシルベニア、スタンフォード… 科学的に認められた 疲労回復大全』(実務教育出版)の一部を再編集したものです。

肩の痛みや腰部に広がる背中上部に苦しむ女性
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人間は「動かない」と疲れる

体の疲労感の正体は、多くが「筋肉のこわばり」です。

特に首・肩・背中に生じたこわばりは、全身のだるさや重さとして自覚されやすく、これが「休んでも疲れが抜けない」感覚につながります。

医師としての経験上、「しっかり寝ているのに疲れが取れない」と訴える方は、その多くが長時間のデスクワークや、同じ姿勢での作業を続けていることが多いです。体を大きく動かさない時間が続くことで、首・肩・背中の筋肉に無意識の緊張が蓄積していくのです。

疲れを感じる若いアジア人
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このとき注目すべきは、筋肉だけではありません。筋肉を包み込み、骨、筋肉、臓器をつなぎ合わせて、全身にネットワークを作っている「筋膜」の存在です。

筋肉は筋線維の束で構成されていて、よく「わら納豆」に例えられます。筋繊維の束全体をまとめ、覆っている「わら」にあたるのが筋膜です。筋膜は、筋肉を包むだけの「膜」ではありません。その周囲には多くの細かい神経が走っていて、体の状態を感じ取るセンサーの役割を担っています。

筋膜が硬直すると、体はそれを「不快感」や「疲れ」として感じ取りやすくなります。さらに筋膜は全身の自律神経とも関係しているため、こわばりが続くと、首・肩・背中に限らず、内臓を含めた体全体の不調につながっていきます。

近年、筋膜の緊張をゆるめる(リリースする)方法として注目されているのが「筋膜リリース」です。筋膜リリースとは、体を動かしたり、手でやさしく圧をかけたり、道具を使ったりして硬くなった筋膜をゆるめ、筋肉が動きやすい状態に戻すケアのことです。

筋膜がゆるむと、筋肉が動かしやすくなるだけでなく、血液やリンパの流れも良くなり、体の動きが軽く感じられるようになります。その結果、「なんとなくだるい」「体が重い」といった疲れも和らぎやすくなります(※1)

筋膜は全身の筋肉にありますが、特に背中から腰にかけて分厚く広がっています。背骨まわりの筋膜には神経も多く、体の緊張やストレスの影響を受けやすい場所です。腰や背中の筋膜をゆるめることで、リラックス神経である副交感神経が活発になるという研究結果(※2)もあります。

※1 Wiewelhove T, Döweling A, Schneider C, Hottenrott L, Meyer T, Kellmann M, Pfeiffer M, Ferrauti A. A Meta-Analysis of the Effects of Foam Rolling on Performance and Recovery. Front Physiol. 2019 Apr 9;10:376.
※2 Acute effects of “Munz Floor”® fascial stretching on autonomic nervous responses assessed by heart rate variability