循環取引は「大人の壮大なおままごと」

架空売上とは、まるで文字数を稼ぐために意味のない言葉で水増しした学生時代のレポートのようなもので、売上の数字だけは膨らんでも中身はスカスカ。その結果、実体のない売上が増える一方で、通常は会社には「回収できない売掛金」だけが財務諸表に溜まっていくことになります。

当然、このような単なる架空売上はすぐにバレてしまいます。そこで、より巧妙な不正手口として使われる手法が「循環取引」です。仕組みはシンプルです。A社→B社→C社と商品を転売し、最後にC社が初めのA社に商品を売る。商品は元の場所に戻るだけで実体は動きませんが、取引が一周するたびに価格が上乗せされ、各社に売上が計上されます。

中身のない売上がぐるぐると回り、いつ崩れてもおかしくないその様は、まさに「ジェンガ」であり、大人が本気でやる壮大な「おままごと」です。

「そんな子供だましのような仕組み、なぜ見抜けないのか?」と思われるかもしれません。しかし、このおままごとは契約書類が完璧に揃い、実際に資金も還流するため、外部からは正常な商取引に見えてしまうのです。それゆえに発見が難しく、上場企業の会計不祥事において何度も繰り返される「王道の不正手口」となっているのです。

売上目標達成のために加ト吉が手を染めた「循環取引」

かつて「冷凍うどん」で絶大な人気を誇った食品メーカー「株式会社加ト吉(現:テーブルマーク株式会社)」が2007年に起こした会計不正事件でも循環取引が使われました。

加ト吉は、極端な売上至上主義の企業文化を持っており、売上目標の達成が絶対的使命でした。

そこで使われたのが「循環取引」です。これにより、実体のない売上がかさ増しされていった結果、2002年3月期〜2007年3月期までの6年間に1000億円程度の売上高の水増しが行われていました。

2007年、監査法人への内部通報をきっかけに不正が発覚。不正発覚前の2006年3月期の最終利益は約65億円の黒字でしたが、それまで隠されていた損失が一気に表面化し、2007年3月期の決算において特別損失235億円を計上し、約98億円という巨額の最終赤字に転落しました。株価は暴落し、社会的な信頼を失ったのです。