「経営の羅針盤」に手を出した

ここで、本来の「管理会計」とは何かを確認しておきましょう。

財務会計:外部報告のシステム
・役割:株主・債権者・投資家などの外部利害関係者に対する情報提供
・特徴:法律や会計基準に基づく統一的なルールに従う

管理会計:内部管理のシステム
・役割:予算管理・原価計算・業績評価など内部の経営管理に役立つ情報提供
・特徴:会社独自のルールで設計可能

白井敬祐、三ツ矢彰『会計が面白いほどわかるミステリ』(KADOKAWA)
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つまり、財務会計が「すべての企業が同じルールで決算書を作成し、利害関係者に報告するためのツール」である一方で、管理会計は、「経営者が会社をマネジメントするために必要な情報を報告するためのツール」なのです。

管理会計は英語で“Management Accounting”。すなわち「経営(管理)のための会計」です。京セラの創業者・稲盛和夫氏は、管理会計を「経営のコックピットの計器盤」に喩え、経営者が正しい判断をするための羅針盤として重視しました。パイロットが計器盤の数値を信じて飛行機を操縦するように、経営者は管理会計の数値を信じて経営判断を下す。だからこそ、その数値には一切の嘘があってはならない。これが管理会計の本質です。

「忖度の会計」で数字はウソまみれに

ところがニデックでは、この「管理会計」という言葉が完全に変質していました。経営者が正しい判断をするための計器盤であるはずが、経営者に都合の良い数字を映し出すための「忖度の会計」になっていたのです。

高度3万フィートを飛んでいるのに計器盤が「1万フィート」と表示していたら、パイロットは正しい判断ができるでしょうか。いい加減な数字で塗り固められた「管理会計」は、もはや管理会計ですらなく、ニデックという巨大企業の計器盤を狂わせ、組織全体を危険な方向へと導いていたのです。

この見えないシステムが、現場から正常な判断力を奪い去ったのです。

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