最適な睡眠時間はどのくらいなのか。睡眠障害治療の専門家で東京足立病院名誉院長の内山真さんは「40代以降は週末の寝だめが効かなくなり、長時間睡眠や日中の強い眠気の背景には病気や生活習慣の問題が隠れていることがある。中高年ほど『長く寝ればよい』という思い込みを見直すべきだ」という――。(第1回)

※本稿は、内山真『やってはいけない睡眠の習慣』(SB新書)の一部を再編集したものです。

ベッドの上で憂鬱そうにしている男性
写真=iStock.com/PonyWang
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40代以降は「寝だめ」ができなくなる

必要な睡眠時間は、加齢とともに短くなっていきます。これまでに行われた世界の調査研究をまとめると、健康な人たちの夜間の睡眠時間は15歳前後で8時間、25歳で7時間、45歳で6.5時間、65歳で6時間と、年を重ねるごとに短くなります。

40代に入ると、平日に溜まった睡眠負債(睡眠不足)を週末にその分眠って返済することができなくなる人が出てきます。これを裏づける実験データはありませんが、医療の現場で不眠の悩みを聞いている実感です。

平日の5日間は一晩6時間弱しか睡眠時間が確保できなくても、週末の2日間で9.5時間ずつ眠ると、1週間で49時間となり、一晩平均で7時間の睡眠時間になります。若い頃は、このような帳尻合わせがうまくできます。平日の1日1時間の睡眠負債を週末に一気に返すことができるのです。

しかし、40代を超えてくると休日だからといって、そんなに長く眠っていることが難しくなり、8時間くらいで起きてしまうようになります。この時期は、生活時間が乱れる夜遊びや深夜のお酒からも卒業し、自分の生活を規則正しくしようと考え始める時期とほぼ一致しています。

適正な睡眠時間が加齢とともに減るにもかかわらず、思いがけず、長く眠ってしまう問題に悩む中高年もいらっしゃいます。眠りすぎで困る問題は、大きく分けて2つあります。1つは、夜の睡眠時間が単純に長くなって生活に支障が出ること。

眠りすぎに隠された大きな問題

もう1つは、夜に眠る時間を取れているのに昼間に眠気に襲われて支障が出ることです。両者は性質が異なります。夜の睡眠時間が延びてしまう場合は、誰もが経験しているものとしては風邪やインフルエンザにかかった時です。

免疫物質に睡眠を促す作用があり、1日中眠くなります。体調が悪くなった結果、眠りが長くなるのです。他には、うつ病、とくに双極症(躁うつ病)や季節性うつ病の方はうつ状態の時に睡眠が長くなることがわかっています。

また、病気ではなくても体内時計が刻んでいる適切な睡眠時間帯に対して遅い時間帯に眠ると睡眠時間が長くなることが報告されています。夜にしっかり眠っているのに昼間に眠くなってしまう場合は、3つの原因があります。

1つ目は、本人の認識とは違い、夜の睡眠時間が量的に足りていない場合です。睡眠が不足していれば昼間に眠くなってしまいます。

2つ目は、夜の睡眠時間の確保はできているのにもかかわらず、睡眠が浅くなっている場合です。睡眠時無呼吸症候群のように呼吸が乱れて睡眠が浅くなっている場合や、周期性四肢運動障害のように眠っているのに体が勝手に動いてしまう不随運動のために、睡眠が浅くなっている場合が考えられます。睡眠時無呼吸症候群や周期性四肢運動障害は中高年に多く見られる睡眠障害で、医師による治療が必要になります。夜の睡眠時間が取れていたとしても、睡眠が非常に浅くなり、昼間に眠くなってしまうのです。