十分に睡眠をとろうとして早めに布団に入ったのに眠れない。なぜそのようなことが起きるのか。睡眠障害治療の専門家で東京足立病院名誉院長の内山真さんは「大人の睡眠は体内時計に強く支配されており、無理な早寝はかえって睡眠の質を下げる」という――。(第4回)

※本稿は、内山真『やってはいけない睡眠の習慣』(SB新書)の一部を再編集したものです。

アイマスクと耳栓をつけて眠ろうとしている女性
写真=iStock.com/AleksandarGeorgiev
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もっとも眠りにくい「睡眠禁止時間帯」

次の日の仕事に備えて、あるいは朝から友人と出かけるために、よく眠っておこうと思い、いつもより早い時刻に寝床に入ったことがあるかと思います。たとえばいつもは24時になってから寝床に入って眠りについている人が21時に寝床に入ると、なかなか寝つけないものです。寝つけたとしても、いつも入眠する時刻あたりで目が覚めてしまう。

私たちの1日を通じた眠りやすさの日内変動(体内時計によって変動すること)について、多くの基礎実験が行われています。夜に一定の時刻になると眠たくなるのは、生き物が約24時間で生理的機能をコントロールしている体内時計の働きによるものです。この体内時計の働きで、その人にとっていつも眠る時刻の2~4時間くらい前の時刻に、1日のうちでもっとも眠りにくい時間帯が訪れます。

たとえばいつもは24時になってから寝床に入ってその後すぐに眠りに入る人を想定すると、21時前後は1日のうちでもっとも眠りにくい時間帯なのです。この時間帯は「睡眠禁止時間帯」と呼ばれています。ちなみに、前日に1分も睡眠を取らない徹夜をして睡眠不足の状態であっても、この時間帯には眠りにくいことがわかっています(※1)

※1 『Neuroscience Letters』2000年「Diurnal preference, sleep habits, circadian sleep propensity and melatonin rhythm in healthy human subjects」(Liu X ら)

眠る時間は起きる時刻に左右される

私たちの体には24時間強で動く体内時計のプログラムが設定されています。たとえば朝7時に起きる方のプログラムを考えてみましょう。起きてから2時間くらい経った9時頃には脳が本格的に働き出して、目もシャキッとしてくる。起きてから、6時間、7時間が経って13時から14時頃になると、昼の眠気が訪れます。

そして、起きた時刻からさらに14時間ほど経った21時には、頭も目も冴えるようになります。この後、昼寝で眠たくなる時刻から12時間ほど経った時刻には、いちばん深く眠っている時間帯になります。13時、14時頃に昼寝の眠気が来る人の場合は、深夜1時、2時頃がその時間帯です。その前の0時、1時には眠りについているのが一般的です。

これは代表例であり、皆に当てはまるものではなく個人差があります。しかし、眠る時刻は、起きる時刻に左右されることに変わりはありません。歴史を紐解いてみても、自分の意志の力で眠ろうと思って眠れた人はいません。そのため私たちは、寝床に入って眠る時刻ではなく、起きる時刻をコントロールするのです。起きていること・起きることは状態に応じてコントロールできます。そして起きる時刻のコントロールが、朝に太陽光を浴びる時刻を決定し、これが体内時計に作用して、眠る時刻を間接的にコントロールすることにつながります。