10時間以上寝る高齢者の健康リスク
3つ目は、夜の睡眠には大きな問題がないのにもかかわらず、昼間に目を覚ましておく仕組み、覚醒を保つ仕組みがうまく働かなくなっている場合です。夜に十分眠っていても日中に耐え難い眠気に襲われ居眠りを繰り返すナルコレプシーが知られていますが、これは10代半ばが発症のピークであり、中高年で急に発症することはありません。
60歳以上は睡眠過多の状態が健康リスクになるといわれています。九州大学の研究チームが、1つの町の住民を対象にした久山町研究というものに取り組んでいます。
認知症のない60歳以上の人を最長10年追跡したところ、平均睡眠時間が5時間から7時間未満の人と比べ、平均睡眠時間が5時間未満の人は認知症リスクが2.64倍、死亡リスクが2.29倍、10時間以上の人も認知症リスクが2.23倍、死亡リスクは1.67倍高いことがわかりました(※1)。
※1 『Journal of the American Geriatrics Society』2018年「Association Between Daily Sleep Duration and Risk of Dementia and Mortality in a Japanese Community」(Ohara T ら)
東北大学の研究チームが1つの地域で行っている大崎国保コホート研究からも、画期的なレポートが出されています(※2)。65歳以上で疾患による問題のない高齢者を対象にした調査で、睡眠時間の変化と認知症発症リスクの関係を調べました。
※2 『Sleep』2018年「Changes in sleep duration and the risk of incident dementia in the elderly Japanese: the Ohsaki Cohort 2006 Study」(Lu Y ら)
満足度がいちばん高い睡眠時間とは
12年前と比べて睡眠時間が1時間以上長くなった人は、睡眠時間が変化していない人に比べて認知症の発症が1.31倍、2時間以上長くなった人は同2.01倍となり、睡眠時間の延長が高齢者における認知症発症リスクの上昇と関連していることが報告されました。
ただし、睡眠時間の延長が直接的に認知症や死亡リスクを高めているのかというと、それは不明です。こうした調査では明らかにするのが困難な身体的な問題があり、それが原因となって睡眠時間の延長と、認知症・死亡リスクを同時に高めている可能性があるからです。従って、この点については、さらなる研究が必要です。
しかし、年を重ねてから必要以上に長く眠っている状況が続いていたら、健康リスクを抱えていることを疑っていいと思います。そもそも、長く眠ったからといって、必ずしも十分に眠ったという満足感を得られるわけではありません。健康・体力づくり事業財団の調査(1997年)では、十分に眠ったと感じる人では6時間台の睡眠の人がいちばん多くて40.4%(※3)。
※3 財団法人健康・体力づくり事業財団の調査(1997年)

