日本橋三越本店が開催した「イタリア展2026」で、高級サンドイッチ店の不適切な衛生管理行為が批判を浴び炎上した。東北大学特任教授で人事・経営コンサルタントの増沢隆太さんは「三越は自らの看板を信じる顧客に対し、他人事ではなく『自分事』として断固たる怒りを示した。これこそが『やっぱり三越は一流だ』と言わしめる、老舗の圧倒的なブランド防衛術である」という――。
東京日本橋の三越本店
写真=iStock.com/mizoula
※写真はイメージです

「さすが三越」と言わしめる危機管理術

謝罪においてスピードはきわめて重要です。しかしただ早ければ早いほど良いのかといえば、そんな単純な話ではありません。謝罪の目的は「事態収拾」と「ダメージコントロール」であり、「事情はともかくとりあえず謝っておく」というような機械的対応は消費者に見透かされ、かえって事態を悪化させます。

このゴールデンウィーク期間中、日本橋三越本店の催事で起きた出展テナントの炎上事件において、見せた三越の振る舞いは、まさにこの「スピード」と「質の伴った判断」が融合したものでした。

三越という、日本を代表する老舗百貨店が自らのブランドをどう守り抜こうとしたのか。その行動はきわめて理にかなったものであり、ブランド防衛において有効な手立てであったといえます。

事件は、連休の賑わいを見せていた日本橋三越本店の名物催事「イタリア展」で発生しました。出店テナントである高級サンドイッチ店において、店長自らのSNS発信が炎上の端緒となったのです。

「映え」を狙った動画が炎上の火種に

問題となったのは、店長の女性自らが顔出しで調理工程を映し出した動画でした。そこには、食品を扱うプロとしては目を疑うような光景が収められていました。

・手づかみでつまみ食いのように試食する姿
・ヘアキャップなどで髪をまとめることもなく、不衛生な状態で調理台に立つ風景

これらは、食の安全を第一に考える消費者から見れば、衛生観念に欠けたものだと映り、批判が集中したのです。

もっと規模の小さい個店だったとしたら、自撮り風の調理シーンや試食する様子なども、頑張る店長、親しみやすくキラキラした仕事ぶりプラスおちゃめな一面、そしてオシャレで映えるビジュアルには効果があったかも知れません。過去にはこうしたインフルエンサー的広報で成功した経験もあるのかも知れません。しかし実際は違いました。

SNSを転載によって拡散し、5月4日頃にはネット上で炎上騒ぎとなりました。個人店ではなく「日本橋三越の催事」という信頼と品格が担保された場所において、高額なデリカテッセンを販売する店舗の情報としては、明らかに不適切でうかつであったと言わざるを得ません。

自ら広報も担うライブ感の発信力は現代では強みとなる一方、信頼ある老舗百貨店の看板(ブランド)の下で売るという文脈において、顧客が求めているのは「親しみやすさ」よりも「レストラン並みの徹底した衛生管理」と、それに見合う「品格」だったのです。