生成AIの急速な進化が、「使い方の格差」を広げている。利用頻度や活用する業務、浮いた時間の使い道に表れる、年収間の違いとは――。

「毎日AI」で2倍の差課金率でも3倍の格差

あなたは今日、AIをどう使っただろうか――。チャットGPT(ChatGPT)の登場から3年5カ月、AIはもはや「使えるかどうか」の段階を過ぎた。人間以上のスピードで企画書を作り、膨大なデータを瞬時に分析する。使わない人が取り残される時代はすでに始まっている。では、AIをどう活用するかで、実際に年収の差は生まれているのか。プレジデントオンライン会員1827人への「AI活用」に関する調査から、AI活用の濃淡と年収が連動している実態が見えてきた。

まずは使うツールの格差。メインで使うAIを尋ねると、チャットGPTとジェミニ(Gemini)がどの年収帯でも上位を占めた。差がついたのはクロード(Claude)だ。チャットGPTやジェミニに比べて自ら探さなければ出会いにくいこのAIをメインにする人は、1500万円以上で約8%と500万円未満の2.7倍に上る。知名度の高いツールだけでなく、自分の業務に合うAIを見極める情報感度の差がここに表れている。

利用頻度はさらに明確に格差が表れている。「ほぼ毎日」と答えた人は年収1500万円以上の層で6割に達する一方、500万円未満では約3割にとどまった。約2倍の差がすでに開いている。そもそも利用したことがない人が500万円未満で約20%、1500万円以上ではわずか4%と5倍の差がある。しかも1年前との比較で活用が「大幅に増えた」人は1500万円以上で5割を超え、500万円未満では3割弱。AIの急速な進化に合わせて活用を増やし続ける層と、足踏みしたままの層。格差は縮まるどころか拡大の一途をたどっている。

【図表】「AI格差」はツール・頻度・課金で着実に拡大

課金状況も象徴的だった。500万円未満の約9割は無課金で、一方の1500万円以上では約3割が自腹で有料版を契約していた。より高度な機能を求めて課金する層と、無料の範囲で済ませる層。課金率でみれば約3倍の差だ。入り口の段階で、AIを活用できる幅にすでに差がつき始めている。

年収の変化はどのように出ているのだろうか。直近1年で「大幅に増えた」人は1500万円以上で13.5%にのぼるが、500万円未満では1.5%と9倍という差が開いている。年収変化の要因はAIだけではないが、日常的に使いこなす層ほど年収も伸びているという結果だ。高年収層がより速いペースで活用を広げている以上、後発組が追いつくのは容易ではないだろう。使うほどにスキルが磨かれるAIの性質上、先に始めた者の優位は強まっていく。では、高年収層は具体的にどのようにAIを活用しているのだろうか。

稼ぐ人はAIに考えさせ低年収は調べもの止まり

AI活用における年収差の拡大は、利用頻度だけでは説明できない。本質は「使い方の質」にある。仕事でAIを使っている業務シーンを尋ねたところ、「情報収集」はどの年収帯でも共通して上位に入った。だが1500万円以上の層はさらにその先まで踏み込んでいる。「データ分析」に41.3%、企画などの「ドラフト作成」に50.8%が活用し、500万円未満のそれぞれ14.8%、20.5%を大きく引き離した。「プレゼン資料のデザイン」でも32.5%対13.3%と差は歴然だ。低年収層がAIを「検索の延長」程度で利用するのに対し、高年収層は「自分の代わりに考えさせるパートナー」として使いこなしている。同じAIを使っていても、引き出す価値の質がまるで違う。AIの能力は高まっているが、力を引き出せるかどうかはどの業務にAIを組み込むかという、人間の判断にかかっている。

注目すべきは、AIを最も使い倒している1500万円以上の層ほど、「絶対にやらせない」と決めていることも多い点だ。社外への提案書の仕上げは37.3%、謝罪対応の最終文面は26.2%が明確に除外している。実際、成果物の使い方を聞くと、この層の4割超がAIの成果物を「少し手直しして使う」と答え、「ほぼそのまま使う」はわずか1.6%。下書きはAIに任せ、仕上げは自分の目で確かめる。任せる「境界線」が明確にあるからこそ、AIに振り回されず成果につながっているのだろう。

【図表】高年収ほどAIと人間の役割を明確化

使い方の差は自己評価にも表れている。AIを使いこなせていると感じる人の割合は1500万円以上で57.1%、500万円未満で36.6%と約20ポイントの開きがあった。実際にどの業務で時間を浮かせているのか。AIで最も時間を短縮できた作業を聞くと、500万円未満を除くすべての年収帯で「情報収集」がトップだったが、なかでも1500万円以上は31.7%と最も高い。日々のリサーチをAIに任せる流れがすでにできている。一方500万円未満は利用していない人が約半数で最多。高年収層がAIで効率化している間に、AIを業務に取り入れていない層との差は広がり続ける。

指示を出すだけで調査や資料作成などの一連の作業を自動でこなす「AIエージェント」の日常活用率も、1500万円以上の16.7%に対し500万円未満はわずか3%と5.6倍の差だ。「知らない」と答えた人も500万円未満では45%に近く、最先端のAI活用法がそもそも届いていない。新しいツールへの感度も、スキルの蓄積も年収が高い層ほど厚い。この複合的な差が、使い方の差を押し広げていく。

【図表】「AIエージェント」導入は高年収ほど多い

浮いた時間でもっと稼ぐ格差がさらに広がる構造

使い方の質の差は、そのまま「時間の差」へとつながっていく。AI活用によって週5時間以上の業務時間を削減できた人は、1500万円以上で31.7%に達した。一方の500万円未満では13.4%にとどまり約2.4倍の差だ。「削減できていない/利用していない」と答えた人は500万円未満の44.2%が最多で、1500万円以上の15.1%とは対照的な結果になった。AIを使いこなす層ほど具体的な時短の成果を手にし、使わない層との差が目に見える形で広がっている。

(構成=本誌編集部 図版作成=大橋昭一)