社内の企画書、取引先からのメール……。その中にまぎれる「AI文章」をあなたは見抜けるか。「手抜き」と思われず、AIで文章を磨き上げるコツを、ライティングの専門家が解説。

「意味」は理解しておらず確率で言葉を並べるだけ

仕事柄、文章を書いたり読んだりすることが多いのですが、ここ数年、人から送られてきた文章で、AIが書いたものをそのまま出したな、と思うものに触れる機会が増えています。そのままというのには、私はかなり憤りを感じるタイプでして、「手抜きをしたな」と思ってしまいます。

中山 順司(なかやま・じゅんじ)
中山 順司(なかやま・じゅんじ) スキナヒト製作所代表。コンテンツ・エヴァンジェリスト。ソフトバンク、楽天トラベル、SixApart、freee、ファベルカンパニーを経て2024年に独立。コンテンツマーケティングを専業とし、オウンドメディアとYouTubeの設計、企画、執筆、編集などを幅広く行う。

私は、「これにより」という表現を見るとAI文章だなと感じます。「これにより、業務効率が向上します」「これにより、リスクが軽減されます」など、一見すると論理的で丁寧な記述ですが、このフレーズはAIが前後の文脈を安易につなぎ、もっともらしい結論へ導くために多用されます。「これにより〜」という前置きは、「ビフォーAI」の時代には、ほとんど見たことがありません。典型的な「アフターAI」のフレーズなのです。

そもそもAIは、人間のように「意味」を理解して文章を書いているわけではありません。伝えたい意図や目的を持つこともない。膨大なデータから次に来る言葉の確率を計算して並べているだけです。だからこそ、平均的で無難な文章になりやすく、独特の癖が残るのです。以下、AIが書いた文章を即座に見抜く4つのポイントを紹介します。

1 不自然な前置きと同義反復

「これにより」だけでなく、「正直に言うと」「明確に述べると」などの前置きを挿入しがちなのがAIの特徴です。人間がこれらの言葉を使うときは、その後に続く内容に相応の重みや意外性があるはずです。しかし、AIはこうした強調フレーズの直後に、至極当たり前の一般論を述べたり、釣り合っていない話をしたりします。

もう一つの癖が「同義反復」です。「柔軟な対応が必要です。そのためには、適応力を高めることが重要です」――似た言葉を繰り返すだけで、何も言っていないに等しい文章になります。さらに、同じキーワードやフレーズを過剰に繰り返す癖もある。文字数のわりに中身が薄い。この冗長さは、AI文章の典型です。

2 固有名詞と数値の欠如

AI文章の最もわかりやすい特徴は、固有名詞と数値が出てこないことです。例えば、「近年、観光業界が注目されています」という書き出し。当たり障りがなく、誰も反論できない代わりに、読者の関心も引きません。一方、「2024年、○×国際空港を利用する外国人観光客が前年比35%増加しました」と書かれていれば、同じテーマでも一気に「今」「ここ」「自分ごと」として具体的にイメージでき、説得力も一段上がります。

AIは誤情報を避けるためか、「多くの企業で」「さまざまな課題」「効果が期待されます」といった曖昧な表現を選びがちです。「対応」「改善」「最適化」「推進」といった抽象語で文章をまとめるのもお決まり。地名・人名・数値が抜け落ち、抽象論に終始する文章を見たら、AIを疑ってください。

3 因果関係の空白

「観光地の安全対策が重要です。観光客が増えているので、事故予防の取り組みが必要です」――一見筋が通って見えますが、これは「結論の羅列」にすぎません。なぜ問題なのか、どの程度深刻なのか、何が原因なのかがわからない文章です。

AIは「〜が重要です」「〜が必要です」で終わり、理由や根拠を示さないことが多い。原因と結果をつなぐ論理の糸が抜け落ちているのです。さらに、AIには「安全性バイアス」が働くように設計されており、「〜といえるでしょう」「ケース・バイ・ケースですが」「バランスが重要です」といった断定を避ける保険表現も多用します。AIには意思がないため、「これが正しい選択である」という判断を下せないのです。

4 均質なリズムと論理の矛盾

AIが生成する文章は、一文の長さが一定になりやすく、文末も「です・ます」が繰り返される傾向にあります。語彙のバリエーションも少なく、個性を感じる言い回しや表現の揺らぎがなく、整いすぎているがゆえに機械的で人間味を欠いた印象を与えます。

(文=本誌編集部)