鮨屋のカウンターで、大将が無愛想に見えたことはないだろうか。余計な会話をせず、ニコリともせずに淡々と握り続ける。多くの客はあれを「職人気質」だと思っているが、実態は違う。富裕層マーケティングを長らく手がけ、数々の名店を訪ねてきた西田理一郎さんは「一流の職人は最初の3分で『いい客』を判断している」と指摘する。スーツのブランドでも時計の値段でもない、「見られている部分」とは――。
鮨店
写真=iStock.com/Chettarin
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「この一貫を出すにふさわしいか」を見ている

客単価3万円、あるいは5万円を超える鮨屋の白木のカウンターに座ったとき、目の前の大将が「無愛想」だと感じたことはないだろうか。余計な口を開かず、鋭い視線をまな板に落とし、淡々と鮨を置き続ける。その張り詰めた空気に気後れし、「自分は歓迎されていないのではないか」と内心で冷や汗をかくビジネスパーソンは少なくない。

だが、それは大きな誤解である。あの無愛想に見える沈黙の正体は、客のすべてを観察するためのレーダーが起動している状態なのだ。そしてそのレーダーは、あなたが暖簾をくぐってからわずか3分間で、「この客にはとっておきの一貫を出すか、出さないか」を決定している。その値踏みの基準は、時計やスーツの値段ではない。

カウンターの中をよく観察してみてほしい。一流の寿司職人は、指先の感覚だけでシャリの重量をグラム単位でコントロールしている。マグロを握る際、毎回必ず「230粒」のシャリを寸分違わず掴み出す熟練の職人もいる。ネタの大きさや脂の乗りに合わせて数粒単位で量を変えるが、それを無意識レベルで正確に再現する。

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