億単位の取引を動かす経営者ほど、勝負の舞台となる「行きつけの鮨屋」を持っている。彼らはどうやって一見客から常連客になっていくのか。富裕層マーケティングを長らく手がけてきた西田理一郎さんは「コースがない店の場合、つい『大将のおまかせで』と言いたくなってしまうが、これは悪手だ。富裕層は別の方法で“とっておきの一貫”を手に入れている」という――。
一言で店内の空気が凍った日
高級鮨店のカウンターに案内され、温かいおしぼりで手を拭き、最初の一杯を注文する。ここまでは順調だ。しかし、次に訪れる「さあ、何を握りましょうか」という大将の静かな問いかけに対して、多くのビジネスパーソンはこう答えてしまう。
「とりあえず、おまかせでお願いします」
この言葉は極めて便利だ。しかし私は、この一言で銀座の老舗の大将の目から一瞬にして光が消えるのを目撃したことがある。言い放った客は、自分が顰蹙を買ったことに最後まで気づかなかった。
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