いいものを作っても価格を下げても売れない
日本の、ある地方都市。その、ごく普通の住宅地の一角に、その会社の工場と物流センターはあります。社員は40人ほど。つくっているのは、カップホルダー、ドリンクホルダー、スマホホルダー、ナンバーフレーム――クルマに乗る人なら、一度は手に取ったことがあるはずの、地味なカー用品です。
創業は戦後すぐ。もとはガラスの文具を手がけていた町の製作所でしたが、車社会の到来とともに、自動車用品メーカーへと姿を変えてきた、典型的な日本のものづくり企業です。
国内では、これまで全国の大手カー用品チェーンに商品を卸し、堅実に商売を続けてきました。しかし、その足元は静かに揺らいでいました。
国内の新車販売は伸びず、人口は減っていく。店頭の棚は限られ、価格競争は年々きつくなる。
「このまま続けていて、10年後、この会社はあるのだろうか」――経営者の頭から、その問いが離れることはありませんでした。
「海外で売る」という選択肢
そこで賭けたのが、海の向こう、アメリカ市場でした。
どのように展開したか。
もちろん、現地に営業所を構えたり、大手商社に頼むような余裕はありません。
まず行ったのは、Amazon.comに自社で出品し、アメリカの消費者へ直接モノを売る、いわゆる「越境EC」という手段です。
これまで日本の市場だけで展開していた、設備も人も限られた地方の、たった40人の会社が、いきなり地球の裏側の市場にネット一本で挑む。
一見、無謀にも思える挑戦でした。
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