そして年商100万ドル(1億5000万円)へ

転機は、“勘”をデータの上に乗せ替えたときでした。

どの商品が、どの車種の、どんな検索語から売れているのか。

広告費を1ドル投じれば、売上は何ドル返ってくるのか。

数字で見えるようになると、打ち手が一変します。

勝っている商品に資源を寄せて、負けている広告は迷わず止める。

その積み重ねで、アメリカでのEC売上は、出品当初のゼロから、わずか1年間で5000万円に。

さらにここからの展開がすごかった。

Amazon.comでの販売が順調であることを知った、アメリカの自動車ディーラーやパーツ販売店が、「この製品を、リアル店舗でも扱いたい」と言ってきたのです。

リアル店舗でも扱われるようになると、ECもさらに売上が伸びていきました。

結果、アメリカでのECにおける年商は約100万ドル――日本円にして、およそ1億5000万円の規模にまで育つことになったのです。

車内でコーヒーを飲むカップル
写真=iStock.com/dima_sidelnikov
※写真はイメージです

薄利多売の下請け業から世界ブランド企業へ

私はこの挑戦に、戦略づくりから広告運用まで伴走しました。

けれど、最後までやり切ったのは、この会社の40人の社員たちです。

私がこの仕事でいちばん胸を打たれるのは、売上の数字そのものではありません。

長い間「言われたものを、決められた値段でつくる」側にいた会社が、自分たちのブランドを掲げ、地球の裏側の消費者から“名指しで”選ばれる側へ回った――その一点です。

伊藤祐太『世界最強のEC戦略』(プレジデント社)
伊藤祐太『世界最強のEC戦略』(プレジデント社)

下請けの薄利多売から、自分の名前で世界に売る商売へ。

立っている場所が、180度、変わったのです。

日本の中小企業には、世界で通用する技術と気くばりが、まだ眠っています。

本当は価値があるのに、薄利多売に甘んじている会社は少なくありません。

足りないのは技術ではなく、「どこで、誰に、どう届けるか」という戦略と、それを支えるデータの仕組みだけです。

この小さな地方のカー用品メーカーが教えてくれるのは、世界市場はもう、大企業だけのものではない、というシンプルな事実なのです。

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