日本の食べ物が世界から人気を集めるのはなぜか。中国事情に詳しいジャーナリストの中島恵さんは「中国では、アニメを見て日本の食文化を知る人が多い。かつて若者の『憧れ』だった和菓子がある」という――。(第3回)

※本稿は、中島恵『中国の回鍋肉にキャベツは使わない』(ウェッジ)の一部を再編集したものです。

手渡し包装布風呂敷、日本のおもてなし
写真=iStock.com/hungryworks
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日本とはまるで違う「中国のちまき」

中国から日本に伝わらない食文化はたくさんある。その中には、一応、日本にも伝播しているけれど、中身が違っていたり、食べる習慣がちょっと違ったりというものもある。

ちまきといえば、日本では5月5日の端午の節句に食べる甘いお菓子というイメージがあるだろう。もち米や米粉の中にあんこを入れたお餅みたいなもので、笹の葉で包んである。

中国で粽といえば、もち米に野菜や肉などを入れて炊いた味つけおこわのことで、中国語では粽子ゾンズ と呼ぶ。

中華ちまき
写真=筆者撮影
中華ちまき。中国では、もち米に野菜や肉などを入れて炊くことが多い

粽はもともと中国の詩人で政治家の屈原の故事に由来する。屈原は入水自殺したが、命日(5月5日)に民衆が彼を悼んで供物のコメを竹筒につめて川に投じた。しかし、供物が龍に食べられてしまうため、龍が嫌いな葉でコメを包み、五色の糸で縛って流すようになったと言われている。

中国では屈原の故事にちなんで5月5日の「端午節」に粽を食べ、その習慣が日本にも伝わったが、日本ではなぜか和菓子になった。

在日中国人が増加した関係で、10年代後半から、都内の中華料理店の中には、5月が近づくと「端午節の粽の注文、承ります」と宣伝するところが増えた。

本場の月餅は大きくて油っぽい

数年前、私も銀座にある武漢料理の店「珞咖壹号かっかいちごう」の粽を友人からもらって食べたことがある。中華料理店のメニューにはあまりないが、中国人のSNSグループには「私が手作りした粽、いかがですか?」といった売り込みをする人もいる。冷凍した粽をSNSで宣伝し、販売するのだ。それを見ると「もう粽の季節になったのか」と季節の移ろいを感じる。

秋の中秋節(旧暦の8月15日)になると、中国では月餅を食べる習慣がある。丸い満月のような形なので月餅と名付けられた。

日本にも伝わったが、日本では1927年(昭和2年)に和菓子などで知られる新宿中村屋が日本人の口に合うように小豆あんを入れた小ぶりな月餅を発売。それが広まり、日本人の月餅のイメージとして定着した。崎陽軒の月餅も有名だ。

本場中国の月餅は形状や中身(あん)は日本のそれとは大きく異なる。中国ではラードを使った生地にさまざまなあんを入れる。アヒルの塩漬け卵黄、小豆、ハスの実、黒ゴマ、クルミ、松の実、ナツメなどがあり、バリエーションが豊富だ。

最も一般的な中華月餅は「広式月餅」と呼ばれる広東式だが、蘇式(蘇州式)月餅、京式(北京式)月餅など地方によってさまざまなタイプがある。いずれも日本の月餅よりもサイズが大きく、やや油っぽいのが特徴だ。